葬儀で使われる言葉の来歴と意味

■お経

仏教の根本は「慈悲」にあり「衆生に楽を与えること」 ゆえに、葬儀でのお経は亡くなった人に対してあげるので   はなく、生きている会葬者に向かって読まれているのです。つまり、お経は葬儀用に作られたものではないのです。お経には「鎮護国家」「五穀豊穣」「請雨」「病気平癒」「怨霊追放」「鎮魂供養」「旅行平安」の7項目に対して功徳を生じる呪力があると仏書に書かれています。葬儀での読経は鎮魂供養に相当しますが、釈迦仏教には「あの世」はないため、お経の言葉の中に成仏は明記されてないのです。

■お清め 

①死の戯れを祓い日常生活に戻ることです。「浄め」とも書きます。

②穢れ(けがれ)に染まったものは水ごり、海水浴びなどの忌みごもりによって浄化すると言われてます。    「海水・塩・水」はしばしば清めの手段として使われています。また、清めには酒食が有効であるとの考えから、 葬儀の食事を「お清め」と称する地域も多いそうです。

③清めになぜ塩が使われるのでしょうか。                                 この答えは『古事記』にあります。イザナギノミコトが黄泉の国からこの世に帰ってきた時、黄泉の国は不浄であったと告げ、穢れた体を海水で清めたとされています。これから、海水を塩と水には分けた形で、今日まで継承されています。大相撲の塩と力水、葬式の清めの塩と手桶水、料亭の盛り塩と打ち水、といった具合であり、元来神道での神事とともに生き残ってきた風習が仏式葬儀でも取り入られてきました。

④仏式の清めは香をたいて自分の身を清めることで、塩で清めるのではないもです。塩で清めるのは神道です。  よって近年仏式葬儀では会葬礼状に清め塩をはさむことや火葬場や墓からの帰りに塩によるお清めもなくなりつつ あります。導師も葬儀が始まる前に、塗香器に入った粉香を体に塗る(振る)作法をすることもしかりです。

■四花

四花、死花、紙花、四華などと書きます。いずれも「しかばな」または「しか」と読みます。これは木の台(大根に差す所もあります)の四隅い銀色の髪でヒラヒラとした小さな短冊状のものを作り立てたものです。通常、仏教では「釈迦が死ぬ時、沙羅双樹が白い鶴のごとく変じた」という故事から出ています。⇒京都妙心寺塔頭「東林院」の沙羅の木が有名です。但し、民俗学的には四花とは四本の幣を墓の四隅に立てて、墓地を結界して霊を外へ出さないようにするためのものであります。つまり両方とも同じようなものでありますが、仏教と民俗学とではその起こりが異なっていることになります。

枕飾り

①枕元に供える枕飾りは仏を供養する「華、塗香、水、焼香、飯食、灯明」にちなむ六種類の供養物を置くことから六種供養とも呼ばれます。六種類の供養物とは「浄水」「枕飯(一膳飯)」「枕団子」「ろうそく⇒火⇒知慧を表す」「香炉⇒香⇒清めを表す」「花立て⇒花(樒)⇒慈悲を表す」を指します。   

②ろうそくの光は「仏の光明」また「支社が迷わないように道を照らすこと」を意味し、線香の煙は「仏の食物」を意味します。

③「一本花」に用いる樒は神の意思の先触れをするとされる木で、大変に生命力の強い木で、魔除けにもなるので       昔から墓などにも植えられていました。

④「枕飯」                                                   (1)枕飯は魂飯、枕水は魂水の意味で、そこに死者の魂が宿るもの(依代)です。枕飯に箸を立てたり、十文字に 差したりするのは、霊がそこに宿るための小型の卒塔婆と言えます。                    (2)「食物が肉体を養うならば、魂も養う」と言う考えから、魂の形である丸型にして供えます。      (3)枕飯は本来死者との「食い別れ」に皆で食べるものですが、衛生上、生者には別の「出立の膳」を用意することになり、枕飯は魂飯、「野膳」として墓に供えられるようになりました。

⑤「枕団子」                                             (1)仏教では釈迦が入滅した時に、無偏身菩薩(むへんしんぼさつ=お地蔵様とされる)が香飯を捧げた故事に基づいており、民族伝承では「死んでから信州善光寺に行くための弁当」という信仰によります。         (2)生団子です。霊供であるから一個でよいのですが、数は一個、三個、四個、五個、六個、七個、十六個というように定まってはいません。                                       (3)枕団子の数は六個が多く、これは六道(地獄、餓鬼、畜生、修羅、人間、天上の六世界)を巡る象徴です。  7個は六道に迷わず極楽に往生できるようにとの願いから一個足したものであり、四と死が同音語であるからです。(4)生団子にするのは、「生団子=ナムアミダ、ナマイダ」等の意味にも通ずるから、また、死者は息が切れたから熱いものを嫌うとも、火にかけると汚れるからとも言われます。

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