「言葉が出てこなかった自分を責めています」──葬儀後のご相談で、一番多いのがこの後悔です。
悲しみに沈む友人や家族を前に、私たちはどう寄り添えばいいのでしょうか?
今日は現場で1,000件以上のご葬儀をお手伝いしてきた私が、**大切な人を亡くした方への“正しい声かけ”**を徹底解説します。

目 次
1、グリーフケアとは
2、グリーフケアの必要性
2-1、ストレス指数ランキング
3、グリーフケアの方法
3-1、故人の思い出を共有する
3-2、専門家への相談
3-3、グループセラピー
4、葬儀もグリーフケアの一部
5、まとめ

1、グリーフケアとは
グリーフケアとは、「深い悲しみ=グリーフ」に寄り添う支援全般を指します。
悲嘆は波のように押し寄せ、時に怒りや罪悪感の形をとります。
葬儀後三日目、喪主の娘さんが「笑うと母に悪い気がする」と涙をこらえていました。
私は「お母さまはあなたの笑顔が大好きだったはずです」と伝え、昔の家族写真を一緒に見返しました。
少しずつこわばりが溶け、彼女は「悲しいけど笑ってもいいんですね」と安堵しました。
グリーフケアは、涙を止めるのでなく涙も笑顔も許す土壌を作る行為です。ここで損をしないための第一歩は「感情を抑え込まない」こと。「泣くことはストレス化学物質を洗い流す仕組みがあるため、泣くのを我慢するとストレスホルモンが体に残り、免疫が落ちると複数の免疫研究で報告されています。

2、グリーフケアの必要性
心身は繋がっています。強い悲しみは睡眠障害・免疫低下・持続的な体調不良を招きます。
ある70代男性は妻の死後、三か月で体重が8キロ減り、帯状疱疹を発症しました。
医師から「悲しみも病気の原因」と告げられ、初めて心のケアの重要性に気づいたそうです。
家族を亡くすと何が起こるかを“見える化”することで、周囲もサポートを用意しやすくなります。

2-1、ストレス指数ランキング
1967年のホルムズ=レイの社会的再適応評価尺度では、配偶者の死がストレス指数100点でトップ。
参考までに離婚は73点、主要なケガは53点です。
豆知識ですが、ストレス指数を全部足して300点を超えると、1年以内に大きな病気が起こる確率が約8割と言われています。
つまり“悲しみのピークにいる人”は、風邪一つでも軽視できない状態。
だからこそ周囲が「心配しすぎかな?」ではなく「医者に相談しようか」と声をかけてください。

3、グリーフケアの方法
方法は三つの柱で覚えましょう。
一つ目は思い出を語る。二つ目は専門家への相談。三つ目がグループセラピーです。
大切なのは「悲しみを排除しない」姿勢。
泣きながら故人の好きだった歌を流す、香りの残った衣類をハンガーに残す──そんな“小さな儀式”が回復を助けます。
ちなみにアメリカの調査で、思い出を語る時間を週2時間確保した遺族は、6か月後の抑うつスコアが30%減少しました。

3-1、故人の思い出を共有する
ある幼い息子さんが「パパは星になったんだよね」と言ったとき、お母さんは返事に詰まりました。
私は「今日は少し空を見上げて“パパ聞こえる?”って声をかけてみましょう」と提案しました。
母子は夜、ベランダで星を探し「おやすみ」と手を振ったそうです。
翌朝お母さんは「泣いたのに心が軽い」とのこと。思い出の共有には“語る・見る・触れる”の三感刺激が効果的です。
写真を一緒に整理する、好きだった料理を再現する──簡単な行動が深い癒やしになります。

3-2、専門家への相談
「悲しくて家事が手につかない。でもカウンセリングは大げさ?」と悩む方は多いです。
けれど心の専門職は風邪のときの内科のようなもの。
実際、カウンセリングを3回受けた50代女性は睡眠薬が不要になり、趣味の俳句を再開できました。
東京都の場合は都立精神保健福祉センターに相談できるほか、各市町村にも担当窓口がありますので保健福祉センターにお問合せください。
「プロに話すとバタバタが整理される感じ」になります。
※余談ですが、涙にはストレス物質コルチゾールを洗い流す働きがあると言われています。**泣くことは“体の掃除”**なんです。

3-3、グループセラピー
同じ経験をした人同士の語り合いが孤独感を半減させるという研究結果があります。
月1回の遺族会に参加した男性は「家族以外で妻の話をできる場所がありがたい」と語りました。
初対面でも共通言語が“悲しみ”なので、自然に心が開くのです。
‘話す’‘聴く’ ‘感じる’ ‘休む’を繰り返すことで
言葉が出ない日でも、人のエピソードを聴くだけで“自分だけじゃない”と感じられます。

4、葬儀もグリーフケアの一部
葬儀は「形のある別れ」であり、“悲しみの棚卸し”ができる機会です。
納棺式で「ありがとう」を声に出した娘さんが、式後に「ようやく息ができた」と漏らしました。
儀式の力は、心に区切りを付けるスイッチ。
さらに参列者からの思い出話は“即席グループセラピー”の役割も果たします。
葬儀もグリーフケアと捉え、形式だけでなく**「何を語り、何を残すか」**を意識すると、回復スピードが変わります。

5、まとめ
- 悲しみは病気にもつながる“見えない重り”。
- 声かけは「答えを急がない」「感情を否定しない」。
- 思い出共有・専門家への相談・グループセラピーの三本柱を提案。
- 葬儀そのものが第一歩のグリーフケア。
最後に魔法のフレーズを一つ。
それは「何かしてほしいことがあれば、いつでも言ってね。無理に答えなくていいからね」。
“話す自由”と“話さない自由”を同時にプレゼントする言葉です。
大切な人を亡くした方のそばに立つあなたが、安心の杖になりますように。