「もし――
“今のお顔は、見ない方がいいかもしれません”
そう言われたら、あなたはどうしますか?」
見るべきか。
やめるべきか。
この選択、正解が一つじゃないからこそ、多くのご家族が一生悩み続けるんです。
私は思うんです。
この問題は、”勇気があるかどうか”でも、”愛情があるかどうか”でもない。
今日は、損傷の激しいご遺体を前にして
「会わなかった家族」と
「会った家族」
それぞれが、その後どう感じているのか。
現場で何度も立ち会ってきた立場から、包み隠さずお伝えします。

目 次
- 「会う・会わない」で悩む理由
- 会わなかった家族が、その後どう感じたか
- 会った家族が、あとで語った本音
- 後悔を分ける”決定的な違い”
- 葬儀社が果たすべき本当の役割
- まとめ
1.「会う・会わない」で悩む理由
損傷の激しいご遺体というのは、事故・ご病気・急変など、ご家族の心が追いついていない状態で直面します。
頭では分かっている。
でも心がついてこない。
「見ない方がいい」
「でも、最後だし…」
この二つが、胸の中でずっとぶつかり続けるんです。
実際に現場でよく聞くのは、こんな声です。
「見たくないわけじゃない。でも、怖い」
「最後だからこそ、きちんと見送りたい。でも…」
「私が耐えられなかったら、故人に申し訳ない」
この葛藤の根っこにあるのは、”後悔したくない”という切実な思い。
でも、どちらを選んでも後悔する可能性がある――だからこそ、この選択は苦しいんです。
私は思うんです。
この葛藤そのものが、もう十分すぎるほどの”愛情”なんだと。
2.会わなかった家族が、その後どう感じたか
よく口にされる言葉があります。
「きれいだった頃の顔だけ、覚えていられました」
「最後の記憶が壊れずに済んだ気がします」
「子どもたちにも、無理をさせずに済んだ」
確かに、”傷ついた姿を記憶に残さない”という意味では、この選択は間違っていません。
一方で、ふとした瞬間に、こんな言葉も出てくる。
「やっぱり、会っておけばよかったのかな…」
「逃げたんじゃないかって、考えることがあります」
「自分だけ、最後まで見届けなかったんじゃないかって」
ここで大切なのは、この後悔は**”間違った選択をした後悔”ではない**ということ。
どんな選択でも、人は後から別の可能性を想像してしまうんです。
特に、一周忌や三回忌といった節目で、その思いが再び浮かび上がることがある。
それは自然なことです。
だからこそ、”会わなかった=間違い”ではないと、知っていてほしいんです。
3.会った家族が、あとで語った本音
一方、会ったご家族。
最初はこう言われることが多いです。
「正直、かなりつらかった」
「今でも夢に出てきます」
「もっと穏やかな姿で送りたかった」
会ったことで受ける精神的な負担は、確かに大きい。
特に最初の数ヶ月は、フラッシュバックのように思い出すこともあります。
でも、しばらく時間が経つと、こんな言葉に変わることがある。
「でも…会ってよかったと思っています」
「自分で決めた、って思えるから」
「最後まで一緒にいられた気がする」
さらに、こんなことを言われる方もいます。
「辛かったけど、それでも”本物”だった」
「逃げなかった自分を、認められる」
会った家族の後悔は、”見てしまったこと”よりも、**”準備が足りなかったこと”**に向くことが多いんです。
「心構えがもっとできていれば」
「もう少しゆっくり時間があれば」
「誰かが側にいてくれたら」
つまり、”会ったこと”自体を後悔しているわけではない。
会い方、そのプロセスに対して、引っかかりを感じているんです。
4.後悔を分ける”決定的な違い”
会った・会わなかった。
この違いよりも、もっと大きな違いがあります。
それは――
「選ばされた」のか
「自分で選んだ」のか。
誰かに
「見ない方がいいです」
「会った方が後悔しません」
と決められた場合。
あとから、必ず心に引っかかりが残る。
「あのとき、自分の意思で決めたんだっけ?」
「本当は会いたかったのに、止められた気がする」
「誰かに流されただけなんじゃないか」
逆に、メリットもデメリットも聞いたうえで
「それでも、こうしたい」と決めた選択。
この場合、後悔は**”納得”**に変わっていくことが多い。
たとえ結果的につらい思いをしても、
「自分で選んだ」という事実が、心を支えるんです。
私は思うんです。
後悔しない選択とは、
“正解を当てること”じゃない。
“自分で決めたと胸を張れること”なんだと。
だからこそ、周りの人間は、
答えを与えるのではなく、選ぶための材料を渡すことが大切なんです。
5.葬儀社が果たすべき本当の役割
ここで、私たち葬儀社の話をさせてください。
私たちの仕事は、
「会わせる」ことでも
「止める」ことでもありません。
やるべきことは一つ。
- 今のお身体の状態
- 想定される精神的負担
- 会った場合、会わなかった場合、それぞれの”その後”
これをきちんと、正直に伝えること。
そして、ご家族が決める時間を守ること。
正直に言います。
現場では、「見せない方が早い」と判断する葬儀社もあります。
でもそれは、ご家族のためではなく、
“トラブルを避けたい”という葬儀社側の都合であることが多いんです。
私たちが本当にすべきことは、
“ご家族が納得できる選択を、自分でできるように支えること”です。
それが、尊厳ある最期を支える本当の使命だと私は思っています。
だからこそ、私たちは
状況説明を丁寧に行い、
選択肢を示し、
ご家族の気持ちを最優先にする。
それができて初めて、”信頼される葬儀社”だと言えるんです。
6.まとめ
損傷の激しいご遺体を前にした選択は、誰にとっても、簡単じゃありません。
でも、覚えていてほしい。
会わなかったあなたも、
会ったあなたも、
どちらも間違っていない。
大切なのは、”形”よりも”気持ち”。
無理をしないこと。
自分の心を壊さないこと。
それが、いちばん尊厳あるお別れになるんです。
もしこれから、同じ選択を迫られる方がいたら、
こう伝えてあげてください。
「どちらを選んでも、あなたは十分愛している」

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