親が亡くなった直後、ATMでお金を引き出すな 借金を背負うケースも!

「通帳も印鑑も親から預かってるし、暗証番号も知ってる。
いざとなったら、自分がATMで下ろせばいい」——
その「当然の行動」が、家族を借金地獄に落とし、兄弟を法廷で戦わせ、税務署の調査を呼び込む。
銀行も、役所も、誰も教えてくれない「親が亡くなった直後のお金の真実」を、今日は全部お伝えします。

葬儀の現場に30年間いると、ある「光景」を何度も見てきました。

深夜のコンビニ。ATMの前で、スマホと通帳を両手に持ちながら立ちすくむ、 喪服の方の姿です。

悲しみの中、お葬式のお金をなんとかしなければ——その一心で走ってきた方です。 でも、その行動が取り返しのつかない事態を招くことがあると知っている私は、 いつも胸が痛くなります。

うちの会社の新入社員・まりな(19歳)が、ある日こう言いました。

「もし明日の朝、大切な親がベッドで静かに息を引き取っていたら……
私、通帳も印鑑も預かってるし、暗証番号も知ってます。
いざとなったら、自分がATMで下ろせばいい、って思っちゃって」

おそらく、日本中の何百万人もの方が、まったく同じことを考えているはずです。 だから今日は、銀行も役所も絶対に教えてくれない「お金の真実」を、5つの理由に分けてお伝えします。


「役所が 銀行に亡くなったことを 通知する」は 誤解

まず、この「誤解」を解かなければなりません

「役所に死亡届を出すと、自動で銀行に通知が行って口座が凍結される」—— こう信じている方が、非常に多いです。

これは、事実ではありません

個人情報保護の壁があり、役所から銀行へ「この方が亡くなりました」と通知する仕組みは存在しません。 銀行が口座を凍結するのは、家族から連絡を受けたとき、または新聞の訃報欄などで気づいたときです。

府中市・あき子さんの実話

府中市に住む、あき子さん(63歳)のお話です。 施設に入っていた80代のお母様の通帳を、ずっと預かっていました。

お母様は生前、こうおっしゃっていたそうです。

「この口座に200万入っているからね。私の葬式代は、ここから出しなさい。
暗証番号は、あんたの生年月日だよ」

優しいお母様でした。そしてお母様が亡くなられた夜、葬儀社から「まず50万円ほど現金で」と言われた場面で—— 親戚のおじさんが、あき子さんの耳元でこう囁きました。

「役所に死亡届を出したら、口座が凍結されるぞ。
銀行が開く前に、今すぐコンビニのATMで、限度額いっぱい下ろしてこい」

あなたなら、どうしますか。財布を握って走り出してしまいそうになりますよね。

でも——それが、最初の大きな間違いへの入り口なのです。


理由2「単純承認の罠」葬儀費用の数十万円のつもりが➡️何千万円の借金を背負うことに!?

民法 921条という「知られざるルール」

これが、5つの理由の中でもっとも恐ろしい話です。

単純承認(たんじゅんしょうにん)とは

亡くなった方の財産・お金に手をつけて、自分のために使ってしまうと、
その瞬間に「私は遺産を全部受け継ぎます」と宣言したと見なされるルール(民法921条)。
良い財産だけでなく、借金も、連帯保証も、すべて引き継ぐことになります。

本来、亡くなったことを知ってから3か月以内であれば、「相続放棄」をして借金から逃れることができました。 でも、一度でも預金に手をつけてしまうと、その道が閉ざされるおそれがあるのです。

お葬式代のつもりで引き出した「数十万円」が——
親の「何千万円もの借金」を家族全員に相続させる引き金になる。

これは、現実に起きていることです。

下ろせるから、下ろしていい——ではないんです。


理由3 国税庁の「税務署の顕微鏡」

国税庁には「KSKシステム」という巨大なシステムがあります。 亡くなった方の、過去10年分の口座の動きを、隅々まで調べることができます。

亡くなる直前・直後に引き出された現金を、相続税の申告から漏らすと—— ただのうっかりミスでは済まされません。

「悪質な財産隠し」と見なされ、重加算税(重い罰金)が課せられます

こっそり下ろすほど、逆に、自分で「証拠」を残すことになってしまうのです。

引き出したお金を守る「3点セット」

もし、どうしても引き出す必要があった場合、私はいつもこの「3点セット」をお伝えしています。

記録の種類内容
領収書葬儀費用・お布施・飲食代まで、原本をすべて保管する
メモ日付・金額・使い道・支払い相手を、その日のうちに書き残す
通帳履歴引き出した記録と出費を、1対1で対応させる

気持ちでは、税務署は動かない。記録でしか、見てくれません。


理由4「兄弟げんかの修羅場」——お葬式の場が、疑いの場に変わる

「でも、家族のお金を家族が使っただけでしょ?そんなに大ごとになるの?」—— そう感じる方も多いです。

後日、通帳の記録を見た兄弟が言うんです。

「葬儀は150万のはずなのに、ATMからは200万下ろしている。
残りの50万は、どこへ行った?」

最悪の場合、「不当利得返還請求」という裁判を起こされることになります。

令和5年度 司法統計より

遺産をめぐって裁判所に持ち込まれた事件のおよそ3分の1が、遺産1,000万円以下のご家庭
財産が少ない家ほど揉める——不公平感は、金額ではなく、感情で爆発します。

「うちは財産が少ないから揉めるはずない」——これが、最大の誤算です。

少ないからこそ、「なんでお前だけ先に取ったんだ」という感情が、より鮮明に燃え上がる。

家族の涙が、家族の争いに変わる。それが、現場でいちばん辛い瞬間です。


理由5「連鎖凍結」——実家の電気・ガス・ローンが、静かに止まっていく

口座が凍結されると、同時に引き落としが止まるものがあります。

  • 実家の電気・ガス・水道(公共料金)
  • クレジットカードの引き落とし
  • 住宅ローンや車のローンの返済
  • スマホの利用料
  • 施設費の自動引き落とし

放っておくと、延滞金が雪だるま式に膨らみ、最悪の場合、ご実家が差し押さえられることもあります。

ATMの前では「お葬式の費用」のことしか頭にない。 でも裏側では、実家の生活そのものが、静かに、確実に止まり始めているんです。

焦るな! でも放置するな!

単純承認・税務署・兄弟げんか・連鎖凍結・銀行の誤解——
この5つをすべて、知らないまま「感情のまま」動くこと。
それが、いちばん高くつく選択です。

大事なのは、派手な一手ではなく——正しい一手です。


国が用意した「合法的な命綱」➡️知らないと損する【仮払い制度】

あき子さんを救った、一つの言葉

コンビニのATMの前で真っ青になって立ちすくむあき子さんに、 葬儀社のベテランスタッフがそっと近づいてこう言いました。

「無理な引き出しは、しなくていいんですよ。
あなたのようなご家族を救うために、国が用意してくれた合法的な道があるんです」

民法909条の2「預貯金の仮払い制度」(2019年7月施行)

  • 遺産分割の話し合いが終わっていなくても使える
  • 兄弟全員のハンコがなくても使える
  • あなた一人で、銀行の窓口から堂々と引き出せる
項目内容
引き出せる金額預金残高 × 1/3 × ご自身の法定相続分
(一金融機関あたり上限150万円)
必要書類亡くなった方の戸籍謄本・相続人の戸籍など
手続き方法銀行の窓口で「仮払い制度を使いたいです」と伝えるだけ

隠れて下ろすのではなく——制度で堂々と下ろす。

知っているか、知らないか。たったそれだけで、天国と地獄ほど結果が変わります。

あき子さんは、この制度を使って、お母様が望んでいた通りの温かいお葬式を出せました。 兄弟で揉めることも、税務署に疑われることも、一切なかったそうです。


最後に…本当の「家族を守る準備」とは

口座の暗証番号を知っていることは、家族を守ることにはなりません。

親御さんが残したお金は、ただの数字ではありません。

その方が人生をかけて、削って削って、残してくれた「思い」なんです。

まりなは、この話を聞き終わったあと、こう言いました。

「知らないまま動くこと——それが、いちばん高くつく。
私、今日家に帰ったら、さっそく親と、お金の話をしてみます」

正しい知識を、みんなが元気なうちに、家族で分かち合っておくこと。 それが、いざという日に家族を守る、唯一の「愛の準備」です。

「生きるを、真剣に考える。」

創業以来、多摩中央葬祭が一日も忘れたことのない理念です。
お金の話も、お別れの話も、その根っこには、いつだって「愛」がある。
私たちは、そう思いながら、毎日この仕事をしています。

本日のまとめ——親が亡くなった直後にATMで引き出してはいけない5つの理由

  1. 役所は銀行に通知しない——「凍結前に急いで」は誤解から生まれる危険な行動
  2. 単純承認の罠——数十万の引き出しが、何千万の借金を相続するリスクに変わる(民法921条)
  3. 税務署の顕微鏡——過去10年分が調査対象。記録なき出金は「財産隠し」と見なされる
  4. 兄弟げんかの修羅場——金額ではなく感情が爆発し、裁判になるケースも(遺産1,000万円以下が3分の1)
  5. 連鎖凍結——電気・ガス・ローンが同時に止まり、延滞金が雪だるま式に膨らむ

解決策

民法909条の2「預貯金の仮払い制度」を利用すれば、一人で・合法的に・堂々と引き出せます。
まず銀行の窓口で「仮払い制度を使いたいです」と伝えることから始めましょう。

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