お葬式に参列するとよく白骨の章を耳にすることがあります。
亡き方を偲び、生かされている我が身に感謝する思いを拝読されます。
葬儀や法要では白骨の章をお寺さんが拝読することがよくあります。プリントを配布して参列者で一緒に拝読することもあります。この白骨の章とはどのようなものなのか、なぜ拝読するのかについて解説します。
- 1. 白骨の章全文はこちら
- 2. 白骨の章のエピソード
- 3. 白骨の章とは
- 4. どうするのか
1.白骨の章全文はこちら
それ、人間の浮生(ふしょう)なる相をつらつら観ずるに、おほよそはかなきものはこの世の始中終、
まぼろしのごとくなる一期(いちご)なり。さればいまだ万歳(まんざい)の人身(にんじん)をうけたりといふことをきかず、
一生過ぎやすし。いまにいたりてたれか百年の形体(ぎょうたい)をたもつべきや。
われや先、人や先、今日ともしらず、明日ともしらず、おくれさきだつ人はもとのしづくすゑの露よりもしげしといへり。
されば朝(あした)は紅顔ありて、夕(ゆうべ)には白骨となる身なり。
すでに無常の風きたぬれば、すなはちふたつのまなこたちまちに閉ち、ひとつの息ながくたえぬれば、
紅顔(こうがん)むなしく変じて桃李のよそほひを失ひぬるときは六親眷属(ろくしんけんぞく)あつまりてなげきかなしめども、
さらにその甲斐あるべからず。さしてもあるべきことならねばとて、
野外におくりて夜半(よわ)の煙(けぶり)となしはてぬれば、ただ白骨のみぞのこれり。あはれといふもなかなかおろなり。
されば人間のはかなきことは老少不定のさかひなれば、たれの人もはやく後生の一大事を心にかて、
阿弥陀仏をふかくたのみまゐらせて、念仏申すべきものなり。
あなかしこ、あなかしこ。
2.白骨の章のエピソード
①蓮如上人の大坂御堂の世話をよくした人に久次郎という人がいて、他宗派に属し門徒ではなかったが、上人も特別に懇意にされていたようです。ところで久次郎は八人の子をつぎつぎと失って、ことのほかその妻が嘆くので蓮如上人に申しあげたところ、この御文章を書いてくださった。これを機縁に久次郎は浄土真宗の僧侶となって御堂に仕えた。 という説
②蓮如上人75歳の時、山科本願寺(やましなほんがんじ)の近くに、青木民部(あおきみんぶ)という下級武士がいました。17歳の美しい娘 清女(きよめ)と、位の高い武家との間に縁談が調いました。民部は喜んで、先祖伝来の武具を売り払い、嫁入り道具をそろえましたが、いよいよ挙式という日に、清女は急病で亡くなってしまったのです。
その翌日、野辺送りをして白骨を納めて帰った民部は、「これが、待ちに待った娘の嫁入り姿か」と悲しみに暮れ、51歳で急逝。たび重なる無常に、民部の妻も翌日、37歳で亡くなってしまいました。
その2日後、山科本願寺の土地を布施した海老名五郎左衛門(えびなごろうざえもん)の17歳の娘さんが急病で亡くなったのです。 葬儀の後、山科本願寺へ参詣した五郎左衛門は、蓮如上人に無常についてのご勧化(ごかんげ)をお願いしました。すでに青木家の悲劇を聞かれていた蓮如上人は、その願いを聞き入れ、書かれたという説があります。
3.白骨の章とは
「白骨の章」は室町時代に活躍された蓮如上人(1415-1499)が書かれたお手紙である「御文(おふみ)」の1つです。ご文章(ごぶんしょう) 御勧章とは(ごかんしょう)とも言われます。
蓮如上人は親鸞聖人から200年後、親鸞聖人の教えを正確に日本全国津々浦々の人に伝えられた方で、その点で蓮如上人以上の方は今日までありません。蓮如上人ご自身も、わずか1年半の間に、奥様、長女、次女、五女、六女五人の肉親を亡くしたそうです。
いつ訪れるかわからない「無常の風」を自覚し「後生の一大事」を心にかけておく。そしてその上で阿弥陀仏に帰依することで、人生を真剣に、かつ安心に生きられるのだという道を示しています。 人の無常の有様は、決して他人事ではありません。年齢に関係なく、誰にでも必ず訪れていくのです。亡くなっていった肉親の人生が儚かったように、ここに生きている私の人生もまた儚いのです。死者を通して、それに気づかされ、その儚い人生の中に真実の尊い意味を見出していったならば、死者の儚い命は、決して無駄にはなりません。それこそが、死者に対する本当の正しい態度であり、悲しみを乗り越えていく道でもあるのです。
4.どうするのか
白骨の章では、老いた人が先に死んで、若い人が後に死ぬと 決まっているわけではない。人の命の儚さは、年老いた者も若い者も変わらない。
死んだらどうなるかは、すべての人が直面する大問題ですから、常に忘れず心にかけなさい、そして阿弥陀仏に助けてもらいなさい。阿弥陀仏に対するお礼の言葉が南無阿弥陀仏です。いつ死んでも極楽参り間違いなしの身にしていただきなさい。と伝えています。
本日は白骨の章について紹介いたしました。