今回のテーマはニュースで注目されている「ヒートショックによる死亡」と、その予防方法についてです。特に冬場に注意が必要なこの現象について、どのように発生し、どのような対策を取るべきかを詳しく解説します。

目 次
- ヒートショックとは?
- ヒートショックが引き起こす身体の反応
- ヒートショックを防ぐための対策
- ヒートショックが疑われる症状が出たら
- ヒートショックを防ぐ意識を持とう
- まとめ
1.ヒートショックとは?
ヒートショックとは、急激な温度変化が原因で体に大きな負担がかかる現象を指します。特に血圧の急激な上昇や下降が引き金となり、心臓や血管に影響を及ぼします。これにより、心筋梗塞や脳卒中などの重大な疾患が引き起こされることがあります。
冬場に特に多いのは、お風呂に入る際の温度差です。例えば、寒い脱衣所から暖かい浴室に移動し、さらに熱いお湯に入ることで体温調整が追いつかなくなります。このとき、血圧が急激に変動し、高齢者や持病を抱える方にとって命に関わる事態となることがあります。
1-1. ヒートショックを起こしやすい年齢層
① 高齢者
リスクが最も高いのは、高齢者です。理由としては以下のような点が挙げられます。
- 体温調節能力の低下
加齢に伴い、温度変化に対応する体の機能が衰えるため、急激な温度変化に耐えられなくなります。 - 血管や心臓の機能低下
動脈硬化や心疾患などの持病を抱えている場合、温度差による血圧の急変に耐えられないことが多くなります。 - 生活習慣の影響
高齢者は一人暮らしのケースも多く、寒い部屋で生活する状況が多いこともリスクを高める要因です。
② 持病を持つ人
高齢者に限らず、高血圧や糖尿病などの持病を抱える方もリスクが高いです。特に血管や心臓に負担をかける疾患を持っている場合、温度変化が引き金となり心筋梗塞や脳卒中を引き起こすことがあります。
③ 若年層でも注意が必要な場合
若い世代であっても、寒い季節に長時間外で過ごした後、熱い風呂に入るなど急激な温度変化にさらされると、ヒートショックが発生することがあります。特に体調が悪い場合や疲労がたまっている場合には注意が必要です。
1-2. ヒートショックによる年間死亡者数
① 年間の死亡者数
日本ではヒートショックに関連した死亡者数が毎年増加傾向にあります。厚生労働省や各自治体のデータによれば、年間1万人以上がヒートショックが原因で亡くなっていると言われています。この数字は、交通事故による死亡者数を大きく上回るものです。
特に冬場(12月から2月)に多く発生し、寒冷地ではその割合がさらに高くなります。また、高齢者がその大部分を占めており、一人暮らしのケースでは発見が遅れることも影響しています。
② 入浴中の死亡事故との関係
ヒートショックが最も多く発生するのは、入浴中です。警察庁のデータによると、入浴中の急死は年間約1万9000件にのぼり、その多くがヒートショックが関与していると考えられています。
- 寒い脱衣所から暖かい浴室への移動
- 熱いお湯への急な入浴
これらが血圧の急変を引き起こし、心停止や脳卒中を招くことが少なくありません。

2. ヒートショックが引き起こす身体の反応
- 血圧の変動
冷えた状態では血管が収縮して血圧が上昇します。その後、急激に温められることで血管が拡張し、逆に血圧が低下します。この上下の変動が心臓に大きな負担をかけます。 - 自律神経の乱れ
温度差によるストレスが自律神経を乱し、心拍数が急激に増加したり減少したりします。 - 血液の流れの変化
血流が一時的に滞ることで、血栓(血の塊)ができやすくなり、これが脳や心臓の血管を詰まらせる原因となる場合があります。

3. ヒートショックを防ぐための対策
① 家の中の温度差をなくす
- 暖房を活用する
脱衣所やトイレなど、家の中で寒くなりやすい場所を暖房で暖めましょう。暖房器具を使用できない場合は、湯たんぽやホットカーペットで部分的に暖を取るのも効果的です。 - 浴室の暖房を取り入れる
浴室暖房機を使用して、入浴前に浴室全体を温めておきましょう。また、シャワーでお湯を流して浴室内の空気を温めるのも簡単な方法です。
② 入浴時の注意点
- お湯の温度はぬるめに設定
入浴時のお湯の温度は40度以下に設定するのが理想です。特に高齢者の場合、38~40度のぬるめのお湯にゆっくり浸かるようにしましょう。 - 急激な温度変化を避ける
いきなり熱いお湯に浸かるのではなく、まず足湯をしたり、シャワーで体を少しずつ温めるようにしましょう。
③ 規則正しい生活を心がける
- 食生活を整える
血圧の変動を抑えるため、塩分を控えめにし、バランスの良い食事を心がけましょう。 - 適度な運動を取り入れる
運動を通じて血管を強化し、体温調整能力を高めることが重要です。ただし、寒い時期の運動は控えめにし、ウォームアップを忘れないようにしましょう。
④ 家族や周囲の協力を得る
高齢者が一人暮らしをしている場合、家族や近所の人々が様子を見守る体制を作ることも重要です。特に冬場はこまめに連絡を取り合い、異変に気づけるようにしましょう。

4. ヒートショックが疑われる症状が出たら
万が一、ヒートショックが原因と思われる症状が現れた場合、速やかに対応することが重要です。
① 症状の例
- めまいやふらつき
- 意識がぼんやりする
- 胸の痛みや強い動悸
- 手足のしびれや麻痺
これらの症状が現れた場合、ただちに医療機関を受診してください。
② 応急処置
- 体を温める
血流を回復させるために、毛布や暖房器具で体を温めます。ただし、急激に温めるのではなく、ゆっくりと温めることが大切です。 - 安静にする
心臓への負担を減らすため、楽な体勢で休むようにします。

5. ヒートショックを防ぐ意識を持とう
ヒートショックは予防可能な事故です。特に高齢者や持病を抱える方にとって、家の中の環境を整えることが何より重要です。
また、日頃から家族や周囲とコミュニケーションを取り、危険な状況を防ぐための意識を共有しましょう。これが、安心して冬を過ごす第一歩です。

6.まとめ
ヒートショックは、寒い冬場に多くの命を奪う恐ろしい現象です。しかし、家の中の温度差を減らす工夫や、入浴時の温度設定を見直すなど、適切な対策を取ることで防ぐことができます。
特に高齢者のいるご家庭では、今回お話しした内容を参考に、身の回りの安全対策を実施してください。寒い季節を快適かつ安全に過ごせるよう、一緒に取り組んでいきましょう。