後悔しない選択|損傷の激しいご遺体「会わなかった家族」「会った家族」その後

「もし――
“今のお顔は、見ない方がいいかもしれません”
そう言われたら、あなたはどうしますか?」

見るべきか。
やめるべきか。

この選択、正解が一つじゃないからこそ、多くのご家族が一生悩み続けるんです。

私は思うんです。
この問題は、”勇気があるかどうか”でも、”愛情があるかどうか”でもない。

今日は、損傷の激しいご遺体を前にして
「会わなかった家族」と
「会った家族」
それぞれが、その後どう感じているのか。

現場で何度も立ち会ってきた立場から、包み隠さずお伝えします。

目 次

  1. 「会う・会わない」で悩む理由
  2. 会わなかった家族が、その後どう感じたか
  3. 会った家族が、あとで語った本音
  4. 後悔を分ける”決定的な違い”
  5. 葬儀社が果たすべき本当の役割
  6. まとめ

1.「会う・会わない」で悩む理由

損傷の激しいご遺体というのは、事故・ご病気・急変など、ご家族の心が追いついていない状態で直面します。

頭では分かっている。
でも心がついてこない。

「見ない方がいい」
「でも、最後だし…」

この二つが、胸の中でずっとぶつかり続けるんです。

実際に現場でよく聞くのは、こんな声です。

「見たくないわけじゃない。でも、怖い」
「最後だからこそ、きちんと見送りたい。でも…」
「私が耐えられなかったら、故人に申し訳ない」

この葛藤の根っこにあるのは、”後悔したくない”という切実な思い。

でも、どちらを選んでも後悔する可能性がある――だからこそ、この選択は苦しいんです。

私は思うんです。
この葛藤そのものが、もう十分すぎるほどの”愛情”なんだと。

2.会わなかった家族が、その後どう感じたか

よく口にされる言葉があります。

「きれいだった頃の顔だけ、覚えていられました」
「最後の記憶が壊れずに済んだ気がします」
「子どもたちにも、無理をさせずに済んだ」

確かに、”傷ついた姿を記憶に残さない”という意味では、この選択は間違っていません。

一方で、ふとした瞬間に、こんな言葉も出てくる。

「やっぱり、会っておけばよかったのかな…」
「逃げたんじゃないかって、考えることがあります」
「自分だけ、最後まで見届けなかったんじゃないかって」

ここで大切なのは、この後悔は**”間違った選択をした後悔”ではない**ということ。

どんな選択でも、人は後から別の可能性を想像してしまうんです。

特に、一周忌や三回忌といった節目で、その思いが再び浮かび上がることがある。
それは自然なことです。

だからこそ、”会わなかった=間違い”ではないと、知っていてほしいんです。

3.会った家族が、あとで語った本音

一方、会ったご家族。
最初はこう言われることが多いです。

「正直、かなりつらかった」
「今でも夢に出てきます」
「もっと穏やかな姿で送りたかった」

会ったことで受ける精神的な負担は、確かに大きい。
特に最初の数ヶ月は、フラッシュバックのように思い出すこともあります。

でも、しばらく時間が経つと、こんな言葉に変わることがある。

「でも…会ってよかったと思っています」
「自分で決めた、って思えるから」
「最後まで一緒にいられた気がする」

さらに、こんなことを言われる方もいます。

「辛かったけど、それでも”本物”だった」
「逃げなかった自分を、認められる」

会った家族の後悔は、”見てしまったこと”よりも、**”準備が足りなかったこと”**に向くことが多いんです。

「心構えがもっとできていれば」
「もう少しゆっくり時間があれば」
「誰かが側にいてくれたら」

つまり、”会ったこと”自体を後悔しているわけではない。
会い方、そのプロセスに対して、引っかかりを感じているんです。

4.後悔を分ける”決定的な違い”

会った・会わなかった。
この違いよりも、もっと大きな違いがあります。

それは――

「選ばされた」のか
「自分で選んだ」のか。

誰かに
「見ない方がいいです」
「会った方が後悔しません」
と決められた場合。

あとから、必ず心に引っかかりが残る。

「あのとき、自分の意思で決めたんだっけ?」
「本当は会いたかったのに、止められた気がする」
「誰かに流されただけなんじゃないか」

逆に、メリットもデメリットも聞いたうえで
「それでも、こうしたい」と決めた選択。

この場合、後悔は**”納得”**に変わっていくことが多い。

たとえ結果的につらい思いをしても、
「自分で選んだ」という事実が、心を支えるんです。

私は思うんです。
後悔しない選択とは、
正解を当てること”じゃない。
“自分で決めたと胸を張れること”なんだと。

だからこそ、周りの人間は、
答えを与えるのではなく、選ぶための材料を渡すことが大切なんです。

5.葬儀社が果たすべき本当の役割

ここで、私たち葬儀社の話をさせてください。

私たちの仕事は、
「会わせる」ことでも
「止める」ことでもありません。

やるべきことは一つ。

  • 今のお身体の状態
  • 想定される精神的負担
  • 会った場合、会わなかった場合、それぞれの”その後”

これをきちんと、正直に伝えること。

そして、ご家族が決める時間を守ること。

正直に言います。
現場では、「見せない方が早い」と判断する葬儀社もあります。

でもそれは、ご家族のためではなく、
トラブルを避けたい”という葬儀社側の都合であることが多いんです。

私たちが本当にすべきことは、
“ご家族が納得できる選択を、自分でできるように支えること”です。

それが、尊厳ある最期を支える本当の使命だと私は思っています。

だからこそ、私たちは
状況説明を丁寧に行い、
選択肢を示し、
ご家族の気持ちを最優先にする。

それができて初めて、”信頼される葬儀社”だと言えるんです。

6.まとめ

損傷の激しいご遺体を前にした選択は、誰にとっても、簡単じゃありません。

でも、覚えていてほしい。

会わなかったあなたも、
会ったあなたも、
どちらも間違っていない。

大切なのは、”形”よりも”気持ち”。

無理をしないこと。
自分の心を壊さないこと。
それが、いちばん尊厳あるお別れになるんです。

もしこれから、同じ選択を迫られる方がいたら、
こう伝えてあげてください。

「どちらを選んでも、あなたは十分愛している」

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