スマートフォンが当たり前になった今、ご遺族が最も長く手放せないもの、それはスマートフォンです。今日は、あるお父様の急死と、最後に届いた一通のLINEメッセージにまつわるお話をご紹介します。
※本エピソードは、実際にあった複数の出来事をもとに、ご遺族のプライバシー保護のため設定を再構成した実話ベースのお話です。
既読のまま止まったメッセージ
63歳の男性Mさんは、駅の階段で倒れ、そのまま亡くなられました。喪主を務めたのは、ひとり娘のAさん。倒れる少し前、Mさんから「今度の日曜、時間ある?ちょっと相談したいことがあるんだ」というLINEが届いていました。
Aさんは仕事中で、既読をつけたものの、返信は「今夜、落ち着いたら」と後回しにしていました。その「今夜」は、来ませんでした。「既読だけついて、返信していない。それが最後の姿になってしまった」と、Aさんはずっと自分を責めていました。
スマートフォンに残っていた、もうひとつのメッセージ
ご遺影の写真を選ぶ作業の中で、Aさんが何気なくMさんのメッセージアプリの下書きフォルダを開くと、送信されていない一件の下書きが残っていました。日付は、Aさんが既読をつけた、Mさんが倒れる十数分前です。
そこには、日曜日に亡き奥様の形見の指輪を、結婚式より先に直接渡したいという計画と、「既読ついたな。返信、急がなくていいからな」という一文が綴られていました。
変わった、涙の意味
Mさんは、娘が既読をつけたことに気づいていながら、何の苛立ちも持っていませんでした。むしろ、娘の忙しさを気遣い、静かに日曜を待っていたのです。この事実を知ったAさんの涙は、後悔の涙ではなく、「怒られていなかった」「待っていてもらえていた」と分かった、安堵と感謝の涙に変わりました。
私たちが大切にしていること
私たちは、ご遺族のスマートフォンを一緒に確認する場面に、これまで数多く立ち会ってきました。デジタルの記録には、紙の手紙とは違う「リアルタイムの本音」が残っていることがあります。だからこそ、ご遺族がその言葉と向き合う時間にも、丁寧に寄り添うことを大切にしています。
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