何のために葬儀をするの?仏教と神道とキリスト教の葬儀の考え方

人が亡くなったとき、ほとんどの国では葬儀を行います。世界には仏教やキリスト教など、様々な宗教の教えに沿った葬儀を行いますが、そもそも、なぜ葬儀を行うようになったのでしょうか。その答えを明確に答えることができる人は少ないことでしょう。

そこで今回は、仏教・神道・キリスト教それぞれの葬儀に対する考え方や葬儀の由来、流れについて解説いたします。葬儀の意味を深く理解することで、よりいっそう心を込めた弔いが行えるようになることでしょう。

目次

1. 何のために葬儀をするの?

葬儀とは、亡くなった方を送り出すための儀式として知られていますが、残されたご遺族や親しい人たちの心を癒す意味でも、とても大事な儀式であるといえます。皆で故人様との思い出を語りあい、故人様に思いをはせることで、大切な人が亡くなったことに対する心の整理を行うことができます。世界には様々な宗教が存在していますが、葬儀をする意味は万国共通と言っても過言ではありません。

2. 仏教の葬儀

仏教の葬儀は、日本ではほとんどの家庭で取り入れられている形式の葬儀です。僧侶がお経を読み、参列者はお焼香をしたり献花をしたりして故人様を偲びます。

仏教の葬儀の由来

仏教では、葬儀で故人様を極楽浄土の世界に送り出すために僧侶が読経を行います。読経には、ご遺族に対してのメッセージも込められており、仏の教えにならって悲しみを癒し、乗り越える意味も含まれています。

また、僧侶が故人様に「戒名」という死後の世界での呼び名をつけられます。戒名は仏教修行の戒律を意味し、仏弟子となった証として与えられます。仏弟子として修行を行うことで、仏様に極楽浄土へ導かれると考えられており、その修業を行うにあたって戒名が必要とされています。

仏教の葬儀の流れ

一般的な仏教の葬儀の流れは、通夜から始まり告別式、火葬で終わります。仏教には真言宗・浄土宗・浄土真宗・天台宗・日蓮宗・曹洞宗と様々な宗派がありますが、全てこの流れで行われます。

まず、通夜では、参列者が着席して準備が整った後に、僧侶が挨拶し読経を始めます。読経後は参列者がお焼香をし、僧侶の法話と喪主の挨拶が行われます。終了後は食事の席が設けられ、故人様とゆかりのある人達が思い出話に花を咲かせながら、宴を終えることが一般的です。そのあとは地域によって、故人の体に魔物がつかないように一晩見守る「棺守り」と呼ばれる儀式を行う場合があります。

そして、通夜の翌日は告別式です。弔辞から始まり読経、焼香、出棺までを一貫して執り行います。火葬場まで同行することもありますが、一般的には故人との関係性が深い間柄の人が同行します。

3. 神道の葬儀

神道の葬儀は、仏教葬儀と同様に日本国内を中心に取り入れられているものですが、実は国内の数%程度しか神道の葬儀は行われていません。神道では、帰幽奉告(きゆうほうこく)の儀から埋葬祭まで、12工程にもおよぶ儀式を行うため、仏教葬儀よりも長いことが特徴です。

神道の葬儀の由来

神道では、“亡くなった方の魂はご遺体から離れて産土神(うぶすながみ)の森に帰っていく”とされています。そしてその魂は、子孫を見守り、お盆やお正月に帰ってくるのです。神道の考え方では、葬儀=故人が守護神となり子孫を見守っていくための儀式とされています。

神道の葬儀の流れ

まずは、帰幽奉告(きゆうほうこく)の儀と呼ばれる儀式から始まります。神棚を閉じて社の手前に白紙を貼り、祖霊舎に「故人が亡くなりました」との報告を行います。その後に行う「枕直しの儀」では、ご遺体を北枕に安置して、故人様の頭に白布をかぶせた状態で枕元に枕飾りを設置します。

翌日は、柩前日(きゅうぜんにっく)の儀を行います。この儀式では、棺の前に御供物を供えたり、故人様が好きだった食べ物を棺に載せて拝礼します。なお、供え物はとれたての新鮮なものが良いとされています。

その後に行われる通夜祭では、故人様の生前の功徳を称える意味で「誄歌(るいか)」と呼ばれる歌が楽奏されます。この後、玉串を捧げて拝礼します。

そのあと、「御霊移し」とも呼ばれる「遷霊祭(せんれいさい)」を行います。これは文字通り、故人様の御霊を霊璽(れいじ=仏教でいう位牌)に写す儀式のことです。その後は、仏教と同様に食事会を開くことが一般的です。故人を偲びながら思い出話に花を咲かせつつ明るい気持ちで終えます。

そして、最後に葬場祭を行います。これは仏教でいう告別式にあたります。葬場祭は僧侶ではなく、神官を迎えて執り行います。神官によるお祓い「修祓(しゅばつ)の儀」を終えたら、弔辞拝受・弔電紹介などを行い閉式となります。

4. キリスト教の葬儀

キリスト教の葬儀は、司祭や神父や牧師を呼んで執り行います。仏教とは違い、亡くなった人を偲ぶのではなく、“故人が現世で全うしたことを神に報告するための儀式”とされています。聖歌や賛美歌を歌っているシーンは、ハリウッド映画などでご覧になったことがある方もいらっしゃるでしょう。日本古来の葬儀よりも、盛大に式を進行するのがキリスト教の葬儀の特徴です。

キリスト教の葬儀の由来

キリスト教では、死は忌むべきものではないと考えられており、神のもとで永遠の生を祝福するという意味で葬儀が行われます。キリスト教にはカトリックとプロテスタントがあり、葬儀の捉え方が異なります。カトリックでは故人のための儀式であることに対し、プロテスタントでは神への感謝と遺族のための儀式といった違いがあります。今回はカトリックの葬儀について紹介します。

キリスト教の葬儀の流れ

キリスト教では、死を目前とした状態から儀式が始まります。まず、安らかな旅立ちと現世での罪の許しを与えるため、司祭が生命が危うくなった信者の額と両手に聖油を塗る「病者塗油の秘跡」と呼ばれる儀式を行い、神のもとへ送ります。

キリスト教の葬儀も仏教と同様に、一連の流れで執り行われます。納棺の儀式では、棺の中に花をたくさん敷き詰め、ご遺体に白い布をかぶせます。そして司祭による祈りや、参列者も含めた聖歌斉唱などが行われることが一般的です。

次に、通夜や前夜祭を行いますが、決まった形式はありません。故人様とゆかりのある人同士で思い出を語り合い、故人様と最後のお別れをします。

その後に行う「葬儀のミサ」では、司祭が棺に水をまいて祝福を与えた後に感謝の典礼を行い、参列者の信徒を対象にパンとぶどう酒を食する聖体拝領が行われます。そして告別式では、献花や弔電披露、生前についてのスピーチをする場合もあります。なお、カトリックは、葬儀でご遺族に「お悔やみ」の言葉を述べることはありません。あくまで葬儀は、故人様のために祈りを捧げる場であるとの考え方になります。

5. まとめ

今回は、仏教・神道・キリスト教それぞれの葬儀の考え方や、あり方についてご紹介しました。

宗教によって考え方や葬儀の流れは様々ですが、いずれの宗教でも故人様が死後の世界でも幸せでいられるように祈りを込めて行うことに変わりありません。現世を生きる私たちが、それぞれの宗教の「死」に対する考え方を理解することは、故人様が安心して旅立つためにも重要なことと言えるでしょう。

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