「亡くなってから24時間以内にお葬式も埋葬も全部終わらせる」──
そう聞いて、皆さんはどんなイメージを持ちますか?
日本では、通夜・告別式・火葬と、最低でも2〜3日はかかるのが『当たり前』。亡くなった方を『安置する』時間も必要です。
ところが、東南アジアの国々では、日本の感覚からすると、衝撃的な送り方がごく普通なんです。
- ⚡ 亡くなったその日のうちに土葬まで終わらせてしまう
- 💀 棺を使わず、白い布だけで土に還す
- 🎉 逆に、村全体で「お祭りみたいな葬儀」を何日もかけて行う
「そんなに急いで、本当にちゃんとお別れできるの?」
「お葬式なのに、お祭りみたいに盛り上がるって、不謹慎じゃないの?」
正直、私たち日本人からすると、「え?」と思う場面も多いと思います。
でも、向こうから見れば、日本のように何日もかけて準備して、形式を整えて、立派な祭壇を組む方が、時間も費用もかかりすぎて不思議に見えるかもしれません。
今日は、そんな「東南アジアの葬儀文化」から、私たちが考えもしなかった『お別れのかたち』を深掘りします。
- ベトナム:大音量のブラスバンドが先導する葬列
- シンガポール:一国にいくつもの別々の葬儀が共存
- タイ・バリ島:悲しみを笑いに変える、地域総出のセレモニー
- イスラム圏(インドネシア・マレーシア):『24時間ルール』で土に還す意味
これらの事例を通して、「人は、何のためにお葬式をするのか?」そして「日本のスタイルは世界の中でどういう位置づけなのか?」という、葬儀の『本質』を一緒に考えていきたいと思います。

目 次
- ✈️ ベトナムとシンガポール──多民族・多宗教が交差する葬儀事情
- 🥳 タイとバリ島──お祭りのように故人を送る文化
- ☪️ 東南アジアのイスラム葬──24時間以内の埋葬と土葬の意味
- 💡 まとめ──「何を大切にするか」で葬儀の形は変わる

1. ベトナムとシンガポール─多民族・多宗教が交差する葬儀事情
まずは、信仰と文化が複雑に絡み合う、ベトナムとシンガポールからです。
▼ベトナム:哀しみの中に“派手さ”がある葬儀
ベトナムは「仏教の国」というイメージが強いですが、実際には、仏教・儒教・道教・カトリックなどが入り混じった、独特の信仰文化を持っています。
特に南部のホーチミンなどでは、葬儀の際にブラスバンドのような“音楽隊”を呼ぶことがあります。
葬列が街を練り歩き、先頭で楽隊が大音量で演奏し、後ろから遺族や参列者が続いていく──。
日本の感覚だと、「え?お葬式でそんなに派手にしていいの?」と思ってしまいますが、彼らにとっては、
「静かにしんみり送る」だけが供養ではない。
「大勢で賑やかに見送ること」も、故人への最大限の敬意
なんです。お金をかけられる家庭では、数日間にわたって弔問客を盛大にもてなしたり、『村全体のお別れイベント』のような形になることもあります。

▼シンガポール:一国の中に、いくつもの葬儀スタイルが共存
一方、シンガポールはご存じの通り多民族国家。中華系、マレー系、インド系…それぞれの宗教・文化によって、葬儀のスタイルもガラッと変わります。
- 中華系(仏教・道教など):
- 紙でできたお金や家、車を燃やして、「あの世で使ってください」と送り出す『紙紮(しざつ)』という儀礼。
- マレー系イスラム教徒:
- 後ほど詳しくお話しする、24時間以内の土葬が基本。
- ヒンドゥー教徒:
- 火葬を行い、遺灰を聖なる海や川に流す『散骨』のような儀式も行います。
同じ『シンガポールのお葬式』でも、信仰によって見た目も時間も費用も、まったくの別物になるんです。
これは、お葬式そのものが「その人が、どんな背景で生きてきたか」を表現する場なんだ、と感じさせられます。日本だと「とりあえず仏式で…」と自動的に決まることも多いですが、シンガポールでは「宗教や文化が違えば、送り方も根本から違う」、そしてそれが当たり前として受け入れられています。

2. タイとバリ島──お祭りのように故人を送る文化
続いて、タイとバリ島。ここは、日本人の「お葬式=しめやか」という常識がひっくり返るエリアです。
▼タイ:僧侶が中心、でも雰囲気は意外と明るい
タイは仏教国で、お寺での葬儀が一般的です。僧侶が読経し、故人の魂が次の世へちゃんと旅立てるように祈る、という流れは日本と似ています。
ただ、タイの僧侶は地域の精神的なリーダー的な存在。葬儀では、僧侶に食事やお布施を捧げることで、「故人の代わりに功徳を積む」という意味合いがあります。
そして、そのあとの食事会がとても明るいのが特徴です。
日本の「お清め」に近いのですが、故人の武勇伝で大笑いしたり、「あのときはこうだったね」と笑顔で思い出話をしたり。悲しみを押し殺すのではなく、悲しみも笑いもひっくるめて、みんなで受け止めていく。それがタイのお別れのスタイルです。

▼バリ島:ガベ──“村全体のお祭り”としての火葬
そして、バリ島。ここは、葬儀文化として本当に特別です。
バリ島ではヒンドゥー教の影響が強く、「ガベ」と呼ばれる火葬儀礼が行われます。
ガベは、
- 遺体を神話に登場する動物や神々をかたどった巨大な棺に納め
- 村の人たちがそれを担いで、村中を練り歩き
- ガムラン音楽が鳴り響く中で、最後に火葬台で燃やす
──という、まさに“お祭りそのもの”のような儀式です。
日本人からすると、「こんな派手で賑やかなのが本当にお葬式なの?」と、かなりのカルチャーショックかもしれません。
でも、バリの人たちにとって、死は『終わり』ではありません。「肉体を焼いて、魂を解き放ち、次の生まれ変わりへ送り出す、大切なセレモニー」なんです。
だからこそ、村全体で何週間も準備をして、多額の費用をかけることもあります。一家で負担できない場合は、複数の家族で合同開催することもあるほど。「そこまでしても、ちゃんと送りたい」という想いは、形は違えど、とても日本人の感覚にも通じるものがありますよね。

3. 東南アジアのイスラム葬──24時間以内の埋葬と土葬の意味
ここからは、インドネシア・マレーシアなど、イスラム教徒が多い地域の葬儀を見ていきます。
イスラム教では、亡くなってから、できるだけ早く、理想は24時間以内に埋葬するという教えがあります。
これは、「遺体をいつまでも残さず、速やかに土へ還すことが、故人にとって最も良い」と考えられているからです。
日本では火葬が当たり前ですが、イスラム圏では土葬が基本です。
- 遺体を白い布(カフン)で包み
- 棺を使わず、土の中に直接安置し
- 土をかけて埋葬する
これには、「生まれたときと同じように、何も持たずに、ありのままの姿で神のもとに帰る」といった意味合いも含まれています。
インドネシアやマレーシアでは、亡くなるとすぐに、親族や近所の人が集まり、遺体を清め、その日のうちに墓地へ向かいます。日本のように通夜・告別式を別々に行ったり、日にちをあけて準備することはあまりありません。
参列者は近親者や近所の方、モスク(礼拝所)の関係者などが中心で、規模は比較的小さく、時間も短めです。
費用も、棺・祭壇・生花・返礼品…といった日本式の『セット』がない分、数万円〜十数万円程度で済むこともあると言われています。
イスラム圏のお葬式は、「豪華さ」や「演出の多さ」ではなく、「どれだけ早く、清く、正しい作法で土へ還すか」。ここに厳格に重心が置かれているのが特徴です。

4.まとめ
今日は、東南アジアの葬儀として、大音量の葬列、24時間以内の埋葬、村中のお祭りといった例を見てきました。
同じ「お葬式」でも、ここまで形が違うのか、と驚かれた方も多いと思います。
でも、どの国にも、どの宗教にも共通しているのは、たったひとつ。
「亡くなった人を大切に想う気持ち」と、
「残された家族を支えたい気持ち」
この2つは、国境も宗教も関係なく、人類共通の感情なんですよね。
日本の葬儀が「正しくて」、東南アジアの葬儀が「間違っている」わけでも、その逆でもありません。
大切なのは、異文化から日本の形を見つめ直し、
- 「自分たちは、何を一番大事にしたいのか」
- 「どんな別れ方なら、あとから振り返って後悔しないのか」
ここをきちんと考えて、送る側・送られる側が心から納得できる形を選ぶことだと思います。
私たち多摩中央葬祭も、「こうしなきゃいけない」という形式論ではなく、「こうしたい」「こうしてあげたい」というお気持ちを一緒に形にしていく葬儀社でありたいと思っています。
「うちの場合はどうしたらいいんだろう?」
「費用を抑えつつ、家族が納得できるお別れはできる?」
そんな疑問や不安があれば、コメント欄でも、事前相談でも、いつでもお気軽にご相談ください。地域密着の私たちだからこそできる、無理のない具体的なご提案をさせていただきます。
今日のお話が、皆さんが「自分たちらしいお別れ」を考える新しいきっかけになれば嬉しいです。


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