その遺影写真で 後悔しない?

葬儀の現場で多い「遺影写真の失敗例4選」と、今選ばれる写真の考え方

お葬式に参列して、式場に入った瞬間。
多くの方が最初に目を向けるものがあります。

それは、中央に飾られた故人様の遺影写真です。

花祭壇はもちろん華やかです。
しかし、ご家族や参列者の心を一瞬で引き込むのは、やはり故人様のお顔です。

遺影写真を見た瞬間、
「本当に亡くなってしまったんだ」
と、現実が胸に迫ってくる。

それほど遺影写真は、お葬式の中で大切な存在です。

ところが、その大切な一枚を、実際の葬儀の現場では、ご家族が悲しみの中で慌てて探していることが少なくありません。

スマホの中を探す。
昔のアルバムを探す。
親族に写真を送ってもらう。
時間に追われながら、なんとか一枚を決める。

その結果、本当は納得しきれていないのに、

  • 30年前の若い頃の写真
  • 集合写真の端を無理に切り抜いた写真
  • 免許証のように表情が硬い写真
  • 本当はスマホの中に良い写真があるのに、ロックが開かず使えない

こうした写真を、選ばざるを得ないことがあります。

だからこそ、私たちはお伝えしたいのです。

遺影写真を準備することは、死の準備ではありません。
残された家族が「もっと探してあげればよかった」と後悔しないための準備です。

この記事では、葬儀の現場で実際によくある遺影写真の失敗例4選と、近年選ばれる遺影写真の考え方についてお伝えします。


目次

近年、遺影写真の選び方は変わってきています

昔の遺影写真は、どちらかというと「きちんとした写真」が選ばれることが多くありました。

お顔が正面を向いている。
髪型が整っている。
服装がきれい。
お化粧もきちんとしている。

もちろん、それも大切です。

しかし近年は、ただ整った写真よりも、
その人らしさが伝わる写真
が選ばれるようになってきました。

きれいな写真なのに、見るたびに悲しくなる

あるご家族から伺ったお話です。

15年前にお母様を見送られた方がいました。
その時に選んだ遺影写真は、お顔がアップで写っていて、お化粧もきれいで、髪型も整っていて、服装もとてもおしゃれだったそうです。

ご家族は、
「この写真ならきれいだから」
と思い、その写真を遺影にされました。

ところが、その方は後になってこうおっしゃいました。

「母の遺影写真は、今でも仏壇に飾っています。
でも、写真の中の母の表情が、どこか寂しくて、悲しそうなんです」

写真に話しかけても、母が悲しそうな顔をしているように見えてしまう。
本当は、明るく笑っていた姿や、楽しそうにしていた思い出を思い出したいのに、写真を見るたびに悲しくなってしまう。

そうおっしゃっていました。


遺影写真は、お葬式の日だけの写真ではありません

このお母様は、本当はとても活動的な方だったそうです。

晩年には習い事を7つもされていて、仲間と楽しく過ごす時間もたくさんありました。
ご家族と一緒に、1か月かけてヨーロッパを巡る旅行にも行かれたそうです。

フランス、イギリス、イタリア、ベルギー。
きっとその旅の中には、笑顔も、会話も、思い出もたくさんあったはずです。

本当なら、遺影写真を見るたびに、

「あの時、お母さん楽しそうだったね」
「ヨーロッパ旅行、喜んでいたよね」
「習い事の仲間と、よく笑っていたよね」

そんな思い出が自然に蘇ってきてほしかった。

でも、写真の表情が悲しそうに見えてしまうことで、明るい思い出よりも、悲しさが先に来てしまったのです。

遺影写真は、お葬式の日だけに飾る写真ではありません。

命日に見る写真。
お盆に見る写真。
仏壇に手を合わせるたびに見る写真。
ふと悲しくなった時、心の中で語りかける写真。

ご家族がその後もずっと向き合う、大切な一枚です。

だからこそ、遺影写真で本当に大切なのは、
見た目が整っていることだけではありません。

その写真を見たご家族の心が、少しでも温かくなるか。
その人らしい記憶が蘇るか。
「ああ、この顔だったね」と思えるか。

そこが、とても大切なのです。


遺影写真で大切なのは「写りの良さ」だけではない

遺影写真を選ぶ時、つい私たちは「写りが良い写真」を探します。

もちろん、写りの良さは大切です。
しかし、写りが良いことと、ご家族が安心できることは、必ずしも同じではありません。

本当に良い遺影写真とは、参列された方や生前ご縁のあった方が見た時に、

「ああ、この人らしいね」
「この顔で、よく笑っていたよね」
「この写真を見ると、思い出が蘇るね」

そう思える一枚です。

表情に温かみがあるか。
その人らしさが出ているか。
楽しかった時間や嬉しかった思い出が自然に蘇ってくるか。

そこを見て選んでほしいと思います。


現場で多い、遺影写真の失敗例4選

ここからは、葬儀の現場で実際によくある遺影写真の失敗例を4つご紹介します。


失敗例1:若い頃の写真を選びすぎてしまう

一つ目は、若い頃の写真を選びすぎてしまうことです。

若い頃の写真が絶対に悪いわけではありません。
ご本人がとても気に入っていた写真であれば、使うこともあります。

ただ、あまりにも昔の写真だと、最近のお姿を知っている参列者が見た時に、

「あれ、ずいぶん若い頃の写真だね」
「最近の雰囲気とは少し違うね」

と、違和感を持たれることがあります。

特に50代、60代、70代と年齢を重ねてこられた方の中には、

「最近、写真を撮られるのが苦手になった」
「昔より老けて見えるから嫌だ」
「自分の写真なんて、もう残さなくていい」

そうおっしゃる方もいらっしゃいます。

しかし、遺影写真は若く見せるための写真ではありません。

その人が、どんな人生を歩んできたのか。
家族を見守ってきた穏やかさ。
人生を重ねてきた優しさ。
いろいろな経験を越えてきた深み。

そうしたものが、年齢を重ねた表情の中に出ていることがあります。

遺影写真は、若さを競う写真ではありません。
その人らしさが伝わる写真を選ぶことが大切です。


失敗例2:集合写真の端から無理に切り抜いてしまう

二つ目は、集合写真の端から無理に切り抜いてしまうことです。

家族旅行、親戚の集まり、食事会、誕生日会。
そうした集合写真の中に、とても良い表情の写真があることはよくあります。

集合写真から切り抜いて遺影写真にすること自体はできます。

しかし問題は、お顔が小さすぎる写真です。

集合写真の端に小さく写っているお顔を、遺影写真のサイズまで大きく引き伸ばすと、どうしても画質が荒くなってしまいます。

目元がぼやける。
口元がにじむ。
輪郭がはっきりしない。
全体的にぼんやりした印象になる。

スマホの画面で見ている時は大丈夫そうに見えても、遺影写真として大きくした時に、粗さが目立つことがあります。

集合写真から選ぶ場合は、次のポイントを確認してください。

  • お顔ができるだけ大きく写っている
  • 表情がはっきり分かる
  • 正面に近い角度で写っている
  • ピントが合っている
  • 明るすぎず、暗すぎない
  • 他の人や物で顔が隠れていない

集合写真の中でも、顔が大きく、表情がはっきり伝わる写真であれば、良い遺影写真になる可能性があります。


失敗例3:免許証や証明写真のような硬い表情を選んでしまう

三つ目は、免許証や証明写真のような硬い表情の写真を選んでしまうことです。

ご家族が写真を探しても、なかなか良い写真が見つからない。
その時に、

「とりあえず顔が正面で写っているから」
「証明写真なら顔がはっきりしているから」

という理由で、免許証やマイナンバーカードのような写真を選ばれることがあります。

もちろん、どうしても他に写真がなければ、証明写真を使う場合もあります。

ただ、証明写真はどうしても表情が硬くなりやすいものです。

少し緊張して見える。
無表情に見える。
ご本人らしい柔らかさが出にくい。

ご家族や参列者が思い出す故人様の表情は、証明書の中の顔ではないはずです。

笑っていた顔。
少し照れた顔。
穏やかに話を聞いてくれた顔。
お孫さんを見て嬉しそうにしていた顔。

そうした普段の表情こそ、その人らしさとして心に残っています。

遺影写真は、本人確認のための写真ではありません。
家族が語りかけるための写真です。

だからこそ、硬すぎる写真よりも、少しでも表情に温かみがある写真を選んでほしいと思います。


失敗例4:スマホにロックがかかっていて、写真を探せない

四つ目は、現場で本当にご家族が困ることです。

それは、スマホにロックがかかっていて、写真を探せないことです。

今の時代、写真の多くはスマホの中に入っています。

ご家族から、次のようなお話を伺うことがあります。

「お父さんのスマホの中に、良い写真があるはずなんです」
「お母さんが旅行に行った時の写真が、スマホに入っているはずなんです」
「最近、孫と撮った写真があったはずなんです」

でも、パスワードが分からない。
顔認証が開かない。
ご本人しかロックを解除できない。

その結果、本当は一番良い写真がスマホの中にあるのに、ご家族が取り出せないことがあるのです。

実は、遺影写真で後悔されるご家族の多くは、写真が一枚もなかったわけではありません。

本当は、もっと探せば良い写真があったかもしれない。
スマホの中に、その人らしい笑顔があったかもしれない。
家族旅行や誕生日の写真の中に、
「ああ、この顔だよね」
と思える一枚があったかもしれない。

でも、お葬式の準備には、思っている以上に時間がありません。

式場を決める。
火葬の日程を決める。
親族に連絡する。
返礼品や料理を決める。
その中で、遺影写真も決めなければならない。

その結果、時間切れのような形で、本当は納得しきれていない写真を選ばざるを得ないことがあります。

そしてお葬式が終わったあとに、

「あっちの写真の方が、お母さんらしかったかもしれない」
「もっと探してあげればよかった」

そう思ってしまうご家族もいらっしゃいます。

だからこそ、元気なうちに写真を残しておく。
家族で共有しておく。
自分で気に入った一枚を伝えておく。

それは、残された家族に後悔を残さないための準備でもあるのです。


遺影写真選びのチェック表

以下の表は、遺影写真を選ぶ時の簡単なチェック表です。
ご家族で写真を探す時の参考にしてください。

チェック項目良い写真の目安注意したい写真
表情自然な笑顔、穏やかな表情無表情、悲しそう、緊張している
年齢最近の雰囲気に近いあまりにも若すぎる
画質顔がはっきりしているぼやけている、粗い
顔の大きさ顔が大きく写っている集合写真の端で小さい
角度正面または正面に近い横顔すぎる、下を向いている
雰囲気その人らしさがある証明写真のように硬い
保管場所家族がすぐ見つけられるスマホロックで見られない

元気なうちに、写真を一枚残しておく

遺影写真というと、どうしても縁起が悪いと感じる方もいらっしゃいます。

しかし、私たちはそうは思いません。

旅行に行ったら、一枚。
誕生日に、一枚。
家族で集まったら、一枚。
お孫さんと笑った時に、一枚。
趣味を楽しんでいる時に、一枚。

顔がはっきり分かって、その人らしい表情の写真を少しずつ残しておく。

それだけで、いつかご家族が遺影写真を選ぶ時に、

「あの写真があるね」
「この写真、お母さんらしいね」
「お父さん、この時、本当に楽しそうだったね」

そんなふうに、悲しみの中でも少しだけ心を落ち着けて、納得できる一枚を選べることがあります。

良い写真が撮れたら、自分のスマホの中だけに入れておくのではなく、家族にも共有しておくことをおすすめします。

LINEで送っておく。
家族の共有アルバムに入れておく。
プリントして残しておく。
信頼できる家族に「この写真、気に入っている」と伝えておく。

それだけでも、ご家族の負担は大きく変わります。


遺影写真は、家族への思いやりです

遺影写真は、亡くなってから慌てて探す写真ではありません。

その人が生きてきた時間の中から、
ご本人自身が、そしてご家族が、
「この笑顔を残したい」
と思える一枚を選ぶものだと思います。

遺影写真を準備することは、決して縁起が悪いことではありません。

むしろ、残された家族がいつかその写真に手を合わせた時に、

「ああ、この写真でよかったね」

そう思えるようにするための、とても大切な思いやりです。


まとめ|後悔しない遺影写真のために大切なこと

最後に、この記事の内容をまとめます。

  • 遺影写真は、お葬式の日だけでなく、その後も家族が手を合わせる大切な写真
  • きれいに整った写真よりも、その人らしさが伝わる写真が選ばれるようになっている
  • 若すぎる写真は、最近の姿を知る人に違和感を与えることがある
  • 集合写真から切り抜く場合は、顔の大きさと画質に注意する
  • 免許証や証明写真は表情が硬くなりやすい
  • スマホにロックがかかっていると、良い写真があっても使えないことがある
  • 元気なうちに、気に入った写真を家族と共有しておくことが大切
  • 遺影写真の準備は、残された家族への思いやり

遺影写真は、ただの写真ではありません。

ご家族がその後も語りかける写真です。
思い出を呼び戻す写真です。
故人様らしさを、家族の心に残す写真です。

だからこそ、元気なうちに、ぜひ一枚。
「自分らしい写真」を残しておいてください。

それがいつか、ご家族にとって、
大きな安心につながるかもしれません。


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