「子どもに心配をかけたくない」
「親に聞いたら、傷つけてしまうかもしれない」
葬儀の現場に立っていると、私たちはこのような親子の“沈黙”に何度も出会います。
親は、子どもを思って言えない。
子どもは、親を思って聞けない。
どちらも悪くありません。
そこにあるのは、冷たさではなく、むしろ優しさです。
けれど、その優しさから生まれた沈黙が、いざという時、残された家族の心に大きな問いを残してしまうことがあります。
「本当に、これで良かったのだろうか」
今回は、多摩中央葬祭のYouTube「多摩おそうぎチャンネル」でお話しした内容をもとに、
最期のことを話せなかった家族と、
少しだけ話せていた家族の違いについてお伝えします。

最期のことを家族と話せている人は、実はとても少ない
厚生労働省の令和4年度調査では、人生の最終段階で受けたい医療やケアについて、家族などと「詳しく話し合っている」人は、わずか1.5%。
「一応話し合っている」人を含めても、29.9%にとどまっています。
つまり、多くの方が、
- 自分はどんな最期を迎えたいのか
- どのような医療やケアを望むのか
- お葬式は家族葬がよいのか、一般葬がよいのか
- 誰に連絡してほしいのか
- 好きだった花や音楽は何か
- 通帳や保険証書はどこにあるのか
こうした大切なことを、家族に伝えられないまま過ごしているのです。
もちろん、最期の話は簡単ではありません。
「縁起でもない」
「まだ早い」
「子どもに心配をかけたくない」
「親に聞いたら傷つけてしまいそう」
そう思うのは自然なことです。
でも私は思うんです。
最期の話は、死ぬための話ではありません。
残される家族が、後悔なく「ありがとう」と言えるための話なのです。
言えなかった家族——山田家の場合
ここで、あるご家族の話をします。
個人が特定されないよう、内容は一部再構成しています。
70代のお母さま・山田久子さん。
40代の娘・麻衣さん。
離れて暮らす、ごく普通の親子でした。
ある日、麻衣さんは電話で、何気なくこう切り出しました。
「この間、テレビで終活の特集をやっていたんだけど、お母さんはそういうの考えてる?」
すると久子さんは、少し笑いながらこう返しました。
「まだそんな年じゃないわよ。それより、あなた仕事は忙しいの?」
明るくかわした久子さん。
でも本当は、心の中では少し考えていました。

「娘が聞いてくれた。
本当は、話したかった。
でも、あの子に心配をかけたくない。
ずっと元気なお母さんでいたい。
もう少し先でいいか……」
一方の麻衣さんも、聞きたいことはたくさんありました。
保険のこと。
相続のこと。
お葬式のこと。
治療のこと。
でも、言葉にできませんでした。
「そんなことを聞いたら、“死ぬ準備をしているの?”みたいに聞こえてしまうかもしれない」
「お母さんを傷つけたくない」
「もう少し先でいいか」
親も子も、お互いを思いやって黙っていたのです。
それは、愛情から生まれた沈黙でした。
その“もう少し先”は、突然やってきた
それから半年後。
久子さんは自宅で倒れ、突然のお別れとなりました。

葬儀の打ち合わせで、葬儀社スタッフが尋ねます。
「お母さまのご意向は、何かお聞きになっていましたか?」
麻衣さんは、答えられませんでした。
「……聞いていませんでした」
式の規模はどうするのか。
家族葬がよかったのか。
親戚や友人にも声をかけた方がよかったのか。
好きだった花は何か。
流してほしい音楽はあったのか。
誰に連絡してほしかったのか。
何も分からないまま、麻衣さんは決め続けました。
もちろん、麻衣さんはできる限りのことをしました。
精一杯、お母さまを送りました。
でも葬儀が終わり、親戚も帰り、祭壇の花も片づいたあと、静かになった母の部屋で、麻衣さんの胸に残ったのは、この問いでした。
「お母さんは、本当はどうしてほしかったんだろう」
祭壇に飾った白いユリ。
選んだのは麻衣さんでした。
でも、それが本当にお母さまの好きな花だったのか。
聞いたことはありませんでした。
流した音楽も。
呼んだ人数も。
式の規模も。
すべて「たぶん、お母さんならこうだと思う」で決めたことでした。
これは、麻衣さんが悪かったという話ではありません。
むしろ、愛情があったからこそ、ずっと気になってしまうのです。

「これで良かったのか」という問いは、長く残ることがある
お葬式が終われば、すべてが終わるわけではありません。
見送ったご家族の心の中には、葬儀後もさまざまな思いが残ります。
「もっと聞いておけばよかった」
「本当は家族葬でよかったのだろうか」
「お花はあれでよかったのだろうか」
「連絡しなかった方に、申し訳なかったのではないか」
「母は、父は、本当はどうしてほしかったのだろう」
この問いは、葬儀が終わったあとも、一年経っても、三年経っても、消えないことがあります。
残された子どもが、
「ありがとう、お母さん」と言って生きていくのか。
それとも、
「これで良かったのだろうか」と抱えて生きていくのか。
その分かれ目は、私は、生前にどんな会話の記憶があったかだと思うんです。
情報のメモは、何をすればよいかを教えてくれます。
でも、感情を共有した時間は、一生、記憶に残ります。
「母は、こう言っていた」
「父は、あの時こう笑っていた」
「本人の声で聞いた」
その小さな記憶が、大切な人を見送ったあと、残された家族の心を支えてくれるのです。
決めていた家族——田中家の場合
次に、もう一つのご家族の話をします。
72歳のお父さま・田中正雄さん。
45歳の息子・健二さん。
夕食後の食卓。
いつもの時間でした。

正雄さんは、何度もためらった末に、息子さんにこう切り出しました。
「健二。ちょっと話があるんだ。暗い話だから、嫌だったら聞かなくていい」
健二さんは驚きました。
「なに、急に」
正雄さんは、ゆっくりと言いました。
「俺が死んだときのことだ。縁起でもないのは分かってる。
でも、お前に迷惑をかけたくないから。聞いてくれるか」
正雄さんも怖かったはずです。
言ったら、息子が嫌がるのではないか。
心配させてしまうのではないか。
困らせてしまうのではないか。
でも、何も言わずにいたら、いざという時、息子がすべて一人で抱えることになる。
それだけはしたくない。
その思いで、正雄さんは一歩踏み出したのです。
父が残したのは、情報だけではなかった
正雄さんは、少しずつ書いていたメモを息子さんに見せました。
そこには、次のようなことが書かれていました。
- 葬儀は家族だけでよいこと
- 大げさな式は望んでいないこと
- 通帳の場所
- 保険証書の場所
- 連絡してほしい人のリスト
- 好きな花のこと
健二さんが尋ねました。
「お父さん、これ、いつ書いたの?」

正雄さんは答えました。
「去年から、少しずつな」
さらに健二さんは、少し声を詰まらせながら聞きました。
「花は? 好きなの、あった?」
すると正雄さんは、少し笑ってこう言いました。
「菊は嫌いだ。なんか暗いから。白いユリがあれば、それでいいな」
その言葉を聞いた健二さんは、静かに言いました。
「父さん、話してくれてよかった」
このとき、二人の間には長い沈黙がありました。
でも、その沈黙は、山田家の沈黙とは違いました。
何も言えなかった沈黙ではなく、
全部を言い終えたあとの沈黙
語り終えた沈黙は、こんなにも温かいのです。

その日、息子は迷わず父を送れた
それから2年後。
正雄さんは穏やかに旅立たれました。
葬儀の打ち合わせで、葬儀社スタッフが尋ねます。
「お父さまのご意向は、お聞きになっていましたか?」
健二さんは、落ち着いて答えました。
「はい。式は家族だけで、こぢんまりと。
お花は、白いユリを使ってほしいと言っていました。
連絡先のリストも預かっています」
健二さんの手元には、あの日のメモがありました。
そして、心の中には父の声が残っていました。
棺に白いユリを添えながら、健二さんはこう思ったそうです。

「お父さんの好きなユリだよ。ありがとう」
迷いませんでした。
「これで良かったのだろうか」という問いは、浮かびませんでした。
なぜなら、知っていたからです。
父が、何を望んでいたのか。
父が、どんな気持ちで生きてきたのか。
あの夜の会話が、すべてを教えてくれていたからです。
「後悔がない」とは、悲しくないという意味ではない
ここで誤解していただきたくないことがあります。
「後悔がない」というのは、悲しくなかったという意味ではありません。
大切な人を亡くしたのですから、悲しいに決まっています。
寂しいに決まっています。
もっと一緒にいたかったに決まっています。
それでも、健二さんは「後悔がない」と言えました。
それは、父の気持ちを知っていたから。
父の声を覚えていたから。
父と感情を共有した夜があったからです。
私は思うんです。
正雄さんが健二さんに残したのは、単なる情報ではありませんでした。
「俺はこう生きた。だから、こう送ってほしい」
という、父の声だったのです。
その声が、今も健二さんの悲しみの夜を支え続けているのだと思います。
二つの家族が教えてくれること
山田家の麻衣さんと、田中家の健二さん。
二人とも、親を大切に思っていました。
二人とも、親を愛していました。
二人とも、突然、大切な人を失いました。
でも、その後に残ったものは違いました。
山田家には、
「本当はどうしてほしかったのだろう」という問いが残りました。
田中家には、
「父らしく送れた。ありがとう」という記憶が残りました。
その違いは、完璧な準備があったかどうかではありません。
どちらかが、一歩踏み出したかどうか。
ただ、それだけだったのです。
親も子も、同時に勇気を出す必要はありません。
どちらかが、少しだけ扉を開けばいいのです。
いきなり葬儀の話をしなくても大丈夫です
「最期のことを話しましょう」と言われると、重たく感じる方も多いと思います。
いきなり、
「葬儀はどうする?」
「延命治療はどうする?」
「相続はどうする?」
と聞くのは、たしかに難しいかもしれません。
だから、最初はもっと小さな会話でいいのです。
たとえば、
- 「お母さん、好きなお花って何だったっけ?」
- 「お父さん、最近何をしている時が一番楽しい?」
- 「昔から好きな歌ってある?」
- 「何かあった時、連絡してほしい人はいる?」
- 「家族だけで静かに送るのと、友人にも来てもらうの、どちらが安心?」
- 「もしもの時、通帳や保険の書類ってどこにある?」
このくらいで大丈夫です。
うまく聞けなくてもいい。
照れくさくて、笑ってごまかしてもいい。
一度で全部話そうとしなくてもいいのです。
大切なのは、家族の中に
「こういう話をしてもいいんだ」
という空気をつくることです。
葬儀の事前相談は、家族の会話のきっかけにもなります
多摩中央葬祭では、立川・府中・国立・昭島の森の風ホールを中心に、家族葬・一日葬・一般葬・直葬など、さまざまなご葬儀をお手伝いしています。
事前相談というと、費用やプランを決める場だと思われる方も多いかもしれません。
もちろん、費用の説明は大切です。
式場の見学も大切です。
家族葬にするのか、一日葬にするのか、火葬式にするのかを知っておくことも大切です。
でも、私たちが事前相談で本当に大切にしているのは、そこだけではありません。
- ご本人が何を大切にしているのか
- ご家族が何に不安を感じているのか
- どんなお別れなら、後悔が少ないのか
- 費用面でどこに不安があるのか
- いざという時、誰が何をすればよいのか
そうしたことを、一緒に整理していくことが大切だと考えています。
事前相談は、葬儀を決めるだけの時間ではありません。
家族が、お互いの気持ちを知るための時間でもあるのです。

たまチュウ安心クラブで、費用面の不安も軽く
多摩中央葬祭の「たまチュウ安心クラブ」にご加入いただくと、2親等まで、
自社式場の利用料が全額無料
ご安置料が全額無料
となります。

お葬式の費用の中でも、式場費とご安置費はご負担が大きくなりやすい部分です。
そこを抑えることで、同じ内容のご葬儀でも、費用面の不安をぐっと軽くすることができます。
「まだ具体的に決まっていない」
「相談だけでもいいのか不安」
「家族にどう切り出せばいいか分からない」
「他社と比較してから決めたい」
そのような段階でも大丈夫です。
相談したからといって、必ず当社で葬儀をしなければならない、ということはありません。
相見積もりや式場見学の一社として、他社と本気で比べていただいて大丈夫です。
数字も、対応も、きっと納得していただけるはずです。
最後に——今夜、ひとつだけ聞いてみてください
最期のことを話すのは、勇気がいります。
親も怖い。
子どもも怖い。
でも、どちらかが一歩踏み出せば、家族の空気は少し変わります。
特別な時間をつくらなくても構いません。
夕飯のあとでも、電話の終わりでも、お茶を飲んでいる時でもいいのです。
今夜あたり、ふっと聞いてみてください。
「お母さん、お花は何が好きだったっけ?」
「お父さん、最近、何をしている時が一番楽しい?」
「昔好きだった歌ってある?」
「何かあった時、連絡してほしい人はいる?」
それだけでいいのです。
最期に家族を救うのは、完璧な準備ではなく、
あの日交わした、たった一言の会話かもしれません。
大切なご家族を、後悔なく送るために。
そして、残されたご家族の心を守るために。
多摩中央葬祭は、これからも地域の皆さまと一緒に、
「生きる」を考えるきっかけをお届けしてまいります。
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多摩中央葬祭株式会社は、1979年創業。
東京23区以外の多摩エリアを中心に、地域密着でご葬儀をお手伝いしてまいりました。
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家族葬、一日葬、一般葬、直葬のこと。
葬儀費用のこと。
ご安置のこと。
もしもの時の流れ。
親にどう話せばいいか、子どもにどう伝えればいいか。
小さな不安でも、どうぞお気軽にご相談ください。
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