「日本は“ほぼ全員火葬”の国──。
では、世界の他の国々は今どうなっているのか?
アメリカやヨーロッパでは、
じつはこの10〜20年で、『土葬から火葬へ』の大きな転換が起きています。
一方で、イスラム教の国々など、
いまも“ほとんど火葬しない地域”もあります。」
欧米・イスラム・そして「これからの日本」
について、お話ししていきます。

目 次
- 欧米で進む「土葬から火葬」への大転換
- イスラム圏・正教会圏──いまも土葬が当たり前の地域
- 世界で火葬が増えている4つの理由
- 世界の流れから考える「これからの日本の供養」
- まとめ──“形”よりも、選び方の軸を持つこと

1. 欧米で進む「土葬から火葬」への大転換
まずは、ヨーロッパやアメリカなどの欧米から見てみましょう。
少し前までのイメージでは、
- 教会の裏に広がる墓地
- 石の十字架がずらっと並ぶ
- 家族代々が同じ墓地に眠る
こういった「土葬」の風景が、欧米のお葬式の象徴でしたよね。
ところがここ20〜30年ほどで、
欧米の多くの国で、火葬が急激に増えています。
たとえば、
- アメリカでは、かつてはほとんどが土葬でしたが、
現在は火葬が過半数を占めるまで増えています。 - カナダは、日本に近いくらい火葬率が高く、
すでに多くの地域で火葬が主流です。 - イギリスや北欧(スウェーデン・デンマークなど)も、
火葬率が非常に高い国として知られています。
ただし、ヨーロッパ全体を見渡すと、
「国や地域によって温度差がある」のも事実です。
- ドイツ、フランス、スペインなどは、都市部を中心に火葬が増加
- 逆に、宗教色の強い地域ほど、土葬が残りやすい
共通しているのは、
まず大都市で火葬が増え、
そこからゆっくり地方へ広がっていく
という流れです。
パリ、ロンドン、ニューヨーク、ベルリン……
こういった大都市では、
- 墓地用の土地が足りない
- 墓地の区画や墓石の費用が高騰している
- 仕事や進学で、家族が世界中に散らばって暮らしている
こうした事情から、
「土葬よりも火葬のほうが現実的」という感覚が広がっています。

2. イスラム圏・正教会圏──いまも土葬が当たり前の地域
一方で、いまも火葬がほとんど行われていない地域もあります。
代表的なのが、
- イスラム教の国々
- 東方正教会(ロシア正教など)が強い地域
です。
イスラム教の教えでは、
故人の身体をできるだけ早く土に還すことが重視されます。
火葬は基本的に認められておらず、
ほぼ全員が土葬です。
また、ギリシャや東ヨーロッパの一部の国々では、
東方正教会の影響で、
「火葬はふさわしくない」と考える人がいまでも多くいます。
その結果、
- 国や地域によっては、火葬率が1桁台
- 都市部に火葬場はあるが、利用する人は少数派
という状況が続いています。
ここでは、
宗教上の価値観が非常に強く働いているため、
- 土地が足りない
- 都市化が進んでいる
といった事情があっても、
すぐに火葬に切り替わるわけではありません。
合理性よりも、
「教え」や「伝統」を優先する地域が、世界にはまだまだたくさんあります。
3. 世界で火葬が増えている4つの理由
では、土葬から火葬へとシフトしている国々では、
どんな理由で火葬が選ばれているのでしょうか。
代表的な理由を、4つに整理してみます。
理由①:土地の問題
世界の大都市で共通しているのが、
「墓地の土地が足りない」
という問題です。
- 都会の中心部に、新しく大きな墓地をつくるのは難しい
- 既存の墓地も、空き区画が少なくなっている
- 墓地を郊外に広げようとしても、交通の便が悪くなる
その結果、
- 火葬をして、コンパクトな納骨堂に納める
- 合葬墓や共同墓地を活用する
など、土地をあまり使わない方法が選ばれやすくなっています。
理由②:費用の問題
土葬の場合、
- 土地の購入
- 墓石の建立
- 維持・管理費
といった費用が必要になります。
一方で、火葬+シンプルな納骨を選ぶと、
トータルの費用を抑えやすいケースが多いです。
世界的に物価が上がり、
格差も広がる中で、
「無理をして大きなお墓は建てられない」
「自分たちの身の丈に合った送り方を選びたい」
という考え方が、
宗教にかかわらず広がってきています。
理由③:ライフスタイルの変化
- 子どもが別の都市や別の国で暮らしている
- そもそも子どもがいない
- 家族が世界中に散らばっている
このようなご家庭では、
「代々一つのお墓を守る」という前提自体が難しい
という現実があります。
そのため、
- お墓を持たない
- 合葬墓・永代供養墓を選ぶ
- 一部を手元供養にし、一部は散骨する
など、「負担を分散する・軽くする」供養が選ばれています。
理由④:環境意識・価値観の変化
ヨーロッパや北米を中心に、
- グリーンバリアル(自然葬)
- 環境に配慮した埋葬方法
- 土地や資源の無駄を減らす選択
こういったキーワードが、
葬送の場面でも注目されるようになりました。
その流れの中で、
- 火葬
- アクアメーション(水葬技術)
- 環境負荷の少ない棺や埋葬方法
などが、新しい選択肢として議論されている国もあります。

4. 世界の流れから考える「これからの日本の供養」
では、こうした世界の流れを踏まえたうえで、
これからの日本はどうなっていくのか。
日本はすでに、
「土葬→火葬」の議論は終わっています。
いまは 「火葬を前提に、その先をどうするか」 がテーマです。
具体的には、
- 大きなお墓を持つかどうか
- 納骨堂・樹木葬・合葬墓など、どのスタイルを選ぶか
- 遺骨をどこまで形として残すか、どこから“心の中で供養する”に切り替えるか
こういった選択肢を、
一つひとつ家族で選んでいく時代に入っています。
私は思うんです、
これからの日本で大事になるのは、
「どのスタイルが世の中的に流行っているか」よりも、
「自分と家族にとって、無理がなく、納得できるかどうか」
という視点だと思います。
- お金の面で無理をしない
- お参りに行く人にとって、負担になりすぎない
- 故人らしさがきちんと表現できる
この3つが揃っていると、
そのご家庭にとっての「ちょうどいい供養の形」が見つかりやすくなります。
世界中で起きている「土葬→火葬」の流れは、
突き詰めると、
- 地球の事情
- 都市の事情
- 家族の事情
そういった “現実との折り合い” をつけるプロセスでもあります。
日本は、火葬という点では世界の“先輩”です。
そのぶん、これからは、
- 火葬のあと、どういう場所に、どういう形で納めるのか
- お墓を持ったとして、その先の世代まで本当に維持できるのか
こうした「その次の段階」を、
じっくり考える時期に来ているのだと思います。

5. まとめ──“形”よりも、選び方の軸を持つこと
ポイントをまとめます。
- 欧米では、ここ数十年で「土葬→火葬」への大きな転換が起きている
- 一方、イスラム圏や東方正教会の地域では、いまも土葬が圧倒的多数
- 世界全体を眺めると、土地・費用・ライフスタイル・環境などの理由から、
少しずつ火葬が増えている - すでに“ほぼ全員火葬”の日本は、「火葬のあと、どう供養するか」がこれからの大きなテーマ
- 大事なのは、土葬か火葬かという“形”そのものより、
「自分と家族にとって無理がなく、納得できる送り方を選べるかどうか」
世界の火葬事情を知ることは、
「へぇ、国によっていろいろ違うんだね」で終わらせる話ではなくて、
「じゃあ、うちの家族はどうしたいのか」
「自分が死ぬとき、どこまで決めておいてあげたいのか」
を考えるきっかけになります。
- 大きなお墓を持つのか
- コンパクトな納骨堂や樹木葬にするのか
- 永代供養にお任せするのか
どれが正解・不正解という話ではありません。
“形”よりも、「選び方の軸」を持つこと。
それが、これからの日本の供養にいちばん必要なことだと、私は思うんです。
もし、
- 「うちはどんな選択肢があるんだろう」
- 「子ども世代の負担を考えると、どう決めるのがいいのか」
そんなことが気になってきたら、
どうぞ私たち 多摩中央葬祭 森の風ホールにご相談ください。
世界の流れも踏まえながら、
ご家族にとっていちばん無理のない形を、一緒に整理していきましょう。


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