多摩エリアで葬儀のお手伝いをしていると、時々、忘れられない一日に出会います。今日は、そのうちのひとつをご紹介します。
※本エピソードは、実際にあった複数の出来事をもとに、ご遺族のプライバシー保護のため設定を再構成した実話ベースのお話です。
ぴりぴりとした空気の中で始まった葬儀
その日お手伝いしたのは、70代の男性Kさんの葬儀でした。喪主は長男の方。もうひとり、遠方に住む弟さんもいらっしゃいましたが、お二人は10年以上、ほとんど言葉を交わしていない間柄でした。理由は、Kさんの介護をめぐる兄弟間の行き違いだったといいます。
通夜の間、お二人の間に会話はほとんどありませんでした。式場には、どこか張り詰めた空気が流れていたのを覚えています。
納棺の場で見つかった一通の手紙
翌日の納棺のとき、弟さんが「待って」と声をかけ、一枚の古い封筒を差し出しました。実家の片付けの際に見つけた、Kさんが8年前に書いた手紙でした。
そこには、長男への感謝と、実は弟のことを恨んでいないでほしいという願い、そして「わしが元気なうちに、お前たちの仲を取り持ちたい」という言葉が綴られていました。渡す勇気が出ないまま、机の引き出しにしまわれていた手紙です。
さらにお話をうかがう中で、弟さんが長年、Kさんの口座を経由して介護費用の一部を仕送りしていたこと、長男さんがそれをまったく知らなかったことも分かりました。Kさんは、二人の間に立って、ずっと橋渡しをしようとしていたのです。
涙の理由
事実を知った瞬間、控室にいたご家族全員が涙を流しました。それは悲しみだけの涙ではなく、10年間止まっていた何かが動き出した安堵と、父親の想いを知った深い感謝の涙でした。
私たちが大切にしていること
ご葬儀の準備は、悲しみの中で慌ただしく進んでいきます。だからこそ私たちは、ご遺族おひとりおひとりが、故人との時間、そしてご家族との時間を、丁寧に振り返れるよう心を配っています。今回のように、納棺という時間が、ご家族の関係を見つめ直すきっかけになることもあります。
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