遺族をさらに傷つける「励ましの言葉」とは?

善意が生むすれ違い、そして本当に必要な寄り添い方

先日 全葬連葬儀事前相談員資格更新3回目の講座を受講しました。

講師は埼玉医科大学国際医療センター大西秀樹教授による遺族外来グリーフケア外来に関するもので(役に立たない援助への対応)という注目すべき言葉が出てきました。大西先生は精神腫瘍科(セイシンシュヨウカ)の先生で:​がん患者さんやそのご家族に対する心のケアを行っており、家族向けの外来も設けています。

人が亡くなったとき、その悲しみは深く、簡単には癒えません。
そして、その人を失った遺族に対して、私たちは「何か言わなければ」と思い、励ましの言葉をかけてしまいがちです。

でも、善意から出たその一言が、逆に遺族の心をさらに傷つけてしまうことがあるのです。
本日は、「避けたい言葉」と「本当に寄り添う言葉」、そして「沈黙の力」まで、丁寧に掘り下げてお話ししていきます。

目 次

1. 「励まし」がすれ違いになる理由

2. 避けるべき励ましの言葉

3. 「寄り添う」とは何か

4. 沈黙の力

5. 本当に心に届いた言葉

6.まとめ

1. 「励まし」がすれ違いになる理由

誰かが大切な人を亡くしたとき、私たちはどう接するべきか迷います。
沈黙に耐えられず、ついこう言ってしまいます。

💬「元気出して」
💬「時間が経てば癒えるよ」
💬「あなたなら大丈夫」

一見、前向きで優しさに満ちた言葉ですが──
悲しみのど真ん中にいる人には、その言葉が「今のあなたではダメだ」と突きつけられたように感じられるのです。

人は喪失の中で、心の整理をつけようと必死になっています。
そこに「前向きに」「泣かないで」と言われると、自分の悲しみが“邪魔なもの”に感じられてしまう。

悲しみは、無理に押し込めるものではなく、丁寧に感じ切るもの。
そのプロセスを奪う言葉は、たとえ善意であっても、時に“暴力”のように響くのです。

2. 避けるべき励ましの言葉

ここでは、実際に遺族の方が「辛かった」と語る言葉をいくつか紹介します。

「もう立ち直ったでしょ?」

→ 心の中ではまだ日々泣いているのに、“治ったことにされてしまう”苦しさ。

「あなたがしっかりしないと、家族が困るよ」

→ 自分の悲しみを後回しにしなければならないと感じ、心が追い詰められます。

「天国で見守ってくれているよ」

→ 優しい言葉に聞こえますが、「もう会えない」という事実をより強く突きつけられることも。

「自分も同じ経験をしたから分かるよ」

→ 共感したい気持ちはありがたい。でも、悲しみは“比較”できるものではありません。

こういった言葉の多くが持つ共通点、それは**「相手の今の気持ちに目を向けていない」**ということです。

励ます側の「何かしなければ」という不安を和らげるために出た言葉が、
遺族の「今の感情を否定」してしまう──
そのズレが、心に重くのしかかるのです。

3. 「寄り添う」とは何か

では、私たちは遺族に対して、どんなふうに接するのが良いのでしょうか。

「寄り添う」という言葉があります。
とても大切で、美しい言葉です。
でも、実際にどうすれば「寄り添っている」と言えるのでしょうか?

まず大切なのは、相手の感情を否定しないことです。

💬「泣いてもいいんだよ」
💬「つらい時は、何も話さなくてもいいからね」
💬「一緒にいてもいい?」

このように、相手が感じていることを“そのまま”受け止める姿勢が、「寄り添い」の第一歩です。

そしてもう一つ、見落とされがちな大切なこと──
それが沈黙です。

4. 沈黙の力

私たちは、沈黙を怖れてしまいがちです。
「何か言わなきゃ」「気まずいな」と思ってしまう。

でも、本当の意味での“寄り添い”は、言葉ではなく“存在”で伝わることがあります。

遺族の方は、心の中で大きな波と戦っています。
その嵐の中で、無理に声をかけられると、かえって気持ちが乱れてしまうこともあります。

そんな時に、ただ隣で静かに座ってくれる人の存在が、
どれほど心の支えになるか──それは言葉では表現しきれません。

💬「今は何も言えないけど、そばにいるよ」
💬「黙って一緒にいようか」

このような沈黙の中にある“思いやり”は、最も深く、優しい慰めとなることがあります。

「話すこと」が優しさではありません。
「沈黙に耐え、心に寄り添うこと」こそ、真の優しさです。

5. 本当に心に届いた言葉

「遺族を辛い気持ちにさせてしまう励ましの言葉」について、具体的ある男性が、母親を亡くしたときのこと。
多くの人が「時間が解決してくれるよ」「頑張って」と声をかけてきました。

でも、ある日、長年の友人がこう言いました。

💬「何もできないけど、ただ一緒にコーヒーでも飲まない?」

この何気ない一言が、心に深く染みたそうです。
「何かをしよう」とするのではなく、
「一緒に過ごしたい」という気持ちが、そのまま伝わった瞬間でした。

時に、**“してあげる”より“共にある”**ということが、何よりの癒しになるのです。

6.まとめ

今回は、「遺族を辛い気持ちにさせてしまう励ましの言葉」についてお話ししました。
人の死に直面する場面では、正解の言葉なんて存在しません。

でも、大切なのは「理解しようとする姿勢」と「一緒にいるという気持ち」です。
沈黙でも、不器用でも、真心は必ず伝わります。あなたのその“優しさの形”が、誰かの心を静かに支える日がきっと来るでしょう。

あなたのお近くで家族を亡くした人が悲しみや苦しみ困っている方がいらっしゃいましたら遺族外来を教えてあげてください。

気持ちの落ち込みが和らぎ、大切な人との思い出を胸に留めながら、自分らしい日々を過ごせるようになります。

悩みが少しでも軽減され新たな一歩を踏み出すことができるようになれるかもしれません。

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