老前整理という言葉、耳にしたことはありますか?
その名の通り、老いる前に身の回りの不要なものや人間関係を整理することを指します。
ですので、子育てがひと段落した40代〜50代の方が始めるなど、
終活よりも早い段階で老前整理をスタートさせる方が多くいらっしゃいます。
とはいえ、どんな手順で進めれば良いか、そもそもするべきかどうか
よく分からない方もいらっしゃるのではないでしょうか?
このブログでは、主にご自身の物を整理する老前整理について、
メリットや注意点を踏まえながらご紹介いたします。
老前整理と生前整理の違いとは
同じ整理がつく言葉でしばしば混同されるのが、生前整理です。
似たような名前ですが、意味が異なります。
<老前整理>
老いる前に、これからの人生をより充実させるために身の回りを整理しておくこと
<生前整理>
死後遺される家族のために、あらかじめ財産などを整理しておくこと
簡単にまとめると、老前整理は自分のために、生前整理は家族のために行います。
また、「老いる前」とタイミングが抽象的ではありますが、始める時期には決まりがありません。
中には20代の方でもミニマリストの生活を始めようと、整理を始めることもあります。
不要なものを断捨離して、必要最低限のものだけで生きる人やそのライフスタイルを指します
老前整理を行うメリット
老前整理を行うメリットは、大きく以下の4つに分けられます。
- 身体が元気なうちに整理ができる
- 家庭内での事故を未然に防ぐことができる
- 無駄な出費を防ぐことができる
- 家族の負担を減らすことができる
それぞれのメリットについて詳しくご紹介いたします。
メリット1:身体が元気なうちに整理ができる
身体が元気なうちに身の回りの整理ができる点は、老前整理の最大の魅力です。
「元気だから大丈夫」と思っていても、体力や筋力、判断力は年齢とともに自然と低下していきます。
それにより、思うように身の回りの整理が進まなくなります。
例えば、大きい荷物や重い荷物が運べなくなる、不要なものと必要なものの区別がつきにくくなる
などといったことが増加します。
身体の自由が利くうちに、物事の正常な判断ができるうちに身の回りを整理しておくのが良いでしょう。
メリット2:家庭内での事故を未然に防ぐことができる
東京消防庁によると、平成29年〜令和3年までの5年間に日常生活における事故(交通事故以外)で
緊急搬送された65歳以上の高齢者のうち、8割以上は転倒によるものでした。
このように年齢を重ねるごとに、つまずいたり転倒したりする可能性が高まります。
しかし老前整理で身の回りの不要なものを整理することで、
そのようなリスクを未然に回避することができます。
また、家庭内の動線を確保することで、万が一地震や火災が起きたときにも役立ちます。
メリット3:無駄な出費を防ぐことができる
一見、整理することと浪費は関係ないことのように思えるかもしれませんが、
整理を行う過程で、ご自身の持ち物を把握することができます。
例えば、すでに持っている洋服と似た色・デザインの洋服を新しく買ってしまうことはありませんか?
そんな方でも整理をすることで手持ちの洋服を把握することができ、
新しく同じようなものを買わなくて済むようになります。
人が管理できるものの数には限りがあります。
整理していくうちに、新品の粗品のタオルや、賞味期限の切れた未開封の調味料などが
どんどん出てくることもあるかもしれません。
「安くなっているから買おう」「無料ならもらっておこう」と思って手に入れたものでも
実際に使っていないことが分かれば、これからの行動にも役立てることができるのではないでしょうか。
メリット4:家族の負担を減らすことができる
老前整理とは、ご自身のために行う整理ではありますが、
結果としてご家族の負担も減らすことができます。
例えば、元気なうちにある程度の整理が進んでいれば、
万が一の際にご家族様が整理すべきものの量は少なくて済みます。
老前整理の進め方
老前整理で行う物の整理は、大きく3つのパートに分かれます。
- 物を「必要なもの」「不要なもの」に分ける
- 不要なものを処分する
- 必要なものを収納する場所を整理する
それぞれ詳しくご紹介いたします。
ステップ1:物を「必要なもの」「不要なもの」に分ける
まずはご自身が所有している物を必要なものと不要なものに分けていきます。
この時、必ず使うもの(=よく使うもの)のみを残すことが重要です。
例えばオシャレな紙袋や保冷剤など、いつか使うだろうと残しておき、
気づいたらたくさん溜まっている、なんて経験はございませんか?
洋服も含め、いつか使うかもしれないからと大切に保管している方も多いのではないでしょうか。
もったいないからと残しておくのでは、中々物は減らず整理も進みません。
老前整理では、潔く捨てることが大切です。
とはいえ、いきなり全て捨てるのは気が引ける…という方は、
1年使わなかったら捨てる、などと期限を決めて残しておくのもおすすめです。
1年間使わなかったものは、今後も使う可能性が低いと考えられます。
反対にこの1年間を振り返ってみて、一度も使っていないものは、処分しても困らないかもしれません。
いずれにしても必要・不要の判断基準は人それぞれですので、
ご自身に向き合ってみて、判断することがとても大切です。
また物を整理があまり得意ではない方の中には、一気に整理しようとすると中々捗らず、
途中で整理することを辞められてしまう方もいらっしゃると思います。
老前整理には明確な期限がありません。ですので、ご自身のペースでゆっくり進めることができます。
「今日はタンスの1段だけ整理する」「上着だけ整理する」などと少しずつ整理していくのがおすすめです。
ステップ2:不要な物を処分する
続いて、不要なものに分類したものを処分します。
物の処分にもさまざまな方法があります。
基本的に費用もかからず処分ができるのは、自治体の回収に出すことです。
お住まいの地域によってルールが異なりますので、
詳しくは各自治体のホームページなどでご確認ください。
エアコン・テレビ・冷蔵庫(冷凍庫)・洗濯機(乾燥機)の家電4品目は
家電リサイクル法で処分の仕方が定められています。
また、パソコンなどの小型家電の処分にも規定がありますので、
処分を検討される方は、前もってよくお調べされると良いでしょう。
ステップ3:必要なものを収納する場所を整理する
最後に残った必要なものを収納する場所を整えます。
この時、新しく収納のためのボックスなどを購入してしまっては本末転倒です。
今あるものを使って整理するように心がけます。
また、ご自身が歳を重ねた時にも不便なく暮らせるかという点にも目を向けて収納することが大切です。
どこに収納するのが良いか分からない方は、ぜひ以下のポイントをご参考になさってください。
- 手が届かない高いところには収納しない
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老前整理とは、これから歳を重ねることを前提に整理することです。運動能力が低下することで、
高いところに収納してある物を取ろうと台に乗り誤って踏み外してしまう、
といった事故が起きる可能性もあります。
既に台に乗らないと手が届かないような高いところへ収納するのは、避けた方が良いでしょう。 - 床には物を置かない
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床に置いた物につまづいて転倒することも起こるかもしれません。
また、将来車椅子に乗る可能性や災害時のことも考慮し、
床だけでなく玄関や廊下にも物を置かないようにしましょう。 - 収納するルールを定める
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収納や整理に苦手意識のある方は、マイルールを定めてみるのはいかがでしょうか。
「よく使うものは取り出しやすい棚の手前に収納する」
「靴は下駄箱に入る分だけ残して、あとは処分する」
などのようにあまり難しくないルールを定めると、取り組みやすくおすすめです。
20代からはじめる老前整理
近年では20代や30代といった若い世代でも、老前整理を行う方が増えてきています。
老いるまでまだ時間があるように思えますが、実は多くのメリットがあります。
ここではその一部をご紹介いたします。
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20代といった若い世代とはいえ、交通事故や病気はいつ誰の身に起こるかは分かりません。
昨日まで元気だったのに、突然身体が自由に動かなくなる可能性もあります。そんな時に備えて、できるだけ前もって不要な物を減らしておき、
ご家族の負担を軽減したいと考える方が多いようです。 -
老前整理を行うメリットでもご紹介いたしましたが、ご自身が持っているものを把握することで、
同じものや似たようなものを購入することが少なくなり、結果浪費を減らすことにつながります。洋服やコスメなど、同じような色のものを持っていることもあるのではないでしょうか。
老前整理を通してご自身が所有しているものを見つめ直し、必要・不要に分けていきましょう。 -
事故や病気と無縁であれば、これまでの人生よりこれからの人生の方が長い方が多いでしょう。
これからの人生をより充実したものにするために、一度スッキリさせて日常を過ごすことができます。
老前整理を行う際の注意点
最後に老前整理を行う際の注意点を3つご紹介いたします。
- ご家族のものを勝手に整理しない
- 無理に一人で整理しようとしない
- 時間をかけてゆっくり行う
注意点1:ご家族のものを勝手に整理しない
1つ目は、ご家族のものを勝手に整理しないことです。
ご家族のものを勝手に整理・処分したことによるトラブルが多いと言われています。
特に趣味のものやこだわりがあるものなど、ご自身とご家族とでは価値が異なるものもあります。
ご自身にとっては不要と思っても、ご家族にとっては大切な宝物かもしれません。
そもそも老前整理とは、老いる前にご自身のために行う整理ですので、
ご家族のものには手を出さず、ご自身のものだけを整理するものです。
どうしてもご自身のもの以外を整理するのであれば、
声をかけて相談してから整理すると良いでしょう。
注意点2:無理に一人で整理しようとしない
2つ目は、無理に一人で整理しようとしないことです。
老前整理では、家電などの重いものや、高いところに収納しているものなどの整理を行うこともあると思います。
その際、無理に1人で移動や片付けをしようとすることで、思わぬ怪我や事故を招く可能性があります。
老前整理は必ずしも1人で行わなくてはならないものではありません。
ご家族やご友人の方などの協力を得ながら、安全第一で行いましょう。
近くに頼れる方がいない場合は、専門の業者に依頼するのも良いかもしれません。
注意点3:時間をかけてゆっくり行う
3つ目は、時間をかけてゆっくり行うことです。
老前整理には、この年齢になるまでに終わらせなくてはならない、という決まりはありません。
一度に全てを片付けようとすると、体力的・気力的に長続きせず、
途中で投げ出してしまう可能性もございます。
早く終わらせようと、思い出の品や大切なものまで捨ててしまうこともあるかもしれません。
また、たまに使う家電も咄嗟に「不要」と判断し処分してしまい、
後日改めて買い直した、という経験のある方もいらっしゃるようです。
老前整理では、ゆっくり時間をかけてこれまでとこれからを見つめながら取り組むことが大切です。
「そもそも時間がかかるものなんだ」と慌てずに少しずつ整理を進めていきましょう。
まとめ
今回は老前整理についてご紹介いたしました。
老前整理はリミットがないからこそ、なかなか始める気が起きなかったり、
物が多く途中で脱線してしまったりと、最後まで根気よく続けるには相当体力のいるものだと思います。
「今日はここだけ整理する」「○時になったら終了する」などとご自身でルールを定めて、
少しずつ進めていくと良いでしょう。