大切な家族や親しい友人、知人などを亡くし、悲しみに打ちひしがれているお相手に、
みなさんならどう声をかけますか?
「助けてあげたい」「力づけてあげたい」という気持ちをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
しかし、その思いが不本意に相手を傷つけてしまう可能性もあります。
今回は、「避けるべき言葉」と「適切な声掛け」についてご紹介いたします。
最初に知っておくべきこと
身近な方を失った悲しみは、誰もがすぐに乗り越えられるわけではありません。
また、悲しみの表現も十人十色あり、例えば「泣かない人=悲しんでいない」というわけではありません。
泣いてしまうだけでなく、怒りや自責感、無力感、不公平感などが感情として現れる人もいらっしゃいます。
「自分はすぐに立ち直れたから、この人も大丈夫だろう」などと決めつけるのではなく、
一人ひとりに合わせて寄り添うことが大切です。
身近な方を失った時に起こりうる変化
身近な方を失った時に起こりうる変化には以下のようなものがございます。
- カラ元気
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思いの外元気に見えていても、実際には精神的に疲れていることがあります。
特に他人を思いやる気持ちが強い方の場合、周りに迷惑をかけまいと自分は大丈夫と言い聞かせ、
苦しみや悲しみを抑え込んでいることもあるでしょう。 - 疲れや思考能力の低下
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身近な方を失ったショックから、思考や行動能力が低下することがあります。
このため、物事の決断が難しく、ぼんやりとした態度が見られる場合もございます。
また、うわの空の状態が続くことで、会話の辻褄が合わないこともあるかもしれません。
避けるべき言動
何気ない言葉でも、相手を傷つけ、悲しみを助長してしまう事があります。
以下に、避けた方が良い言動の一例をご紹介いたします。
- 「そのうち楽になりますよ。時間が解決してくれますよ」
「もう少しすれば気持ちが和らぎますよ」 -
その場の気やすめに聞こえます
- 「泣いてばかりいないで…」
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感情を表に出すことを禁じているように聞こえます
- 「泣いた方がいいですよ」
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悲しみの表現は十人十色で、悲しくても泣くことができない場合があります
- 「あなたはまだ良いほうですよ」
「私のときはこうだった」 -
他人との比較は慰めになりません
- 「あなたがしっかりしないと…」
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心のよりどころを失っている時には、その言葉はつらく聞こえます
- 「そんなに悲しんでいたら、亡くなった人が心配しますよ」
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悲しむことが悪いように聞こえます
- 「思ったより元気そうですね」
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心の悲しみを理解してもらえていないと感じます
また、人と会うときに無理して明るく振る舞っている方もいらっしゃいます - 「早く乗り越えてね」
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気持ちを理解してもらえていないと感じます
- 「私だったらとても耐えられないわ」
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他人事のように聞こえます
ご自身にとっては慰めのつもりでも、受け取る側にはそのように聞こえないかもしれません。
相手の感情に深入りせず、程よい距離感で会話をすると良いでしょう。
適切なコミュニケーション
ご遺族の悲しみの症状や置かれている状況、死別による影響、その対処法などには、非常に個人差があります。
では、どのように声をかけたり、コミュニケーションをとったら良いのでしょうか。
以下に具体的なコミュニケーション例をご紹介いたします。
- 1.話を聴く
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相手の話に耳を傾け、感情を受け入れましょう。言葉だけでなく、感情や体調にも気を配ります。
時折、「そうなんですね」「そうですね」といった相手を否定しない相槌を打ち、
胸の内を声に出すことを助けるのも大切です。 - 2.相手の気持ちを認める・共感する
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相手の感情を共感し、共に感じることが重要です。
・大変だったね。それは辛いね
- 3.かける言葉が見つからないときは、素直に心配していることを伝える
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・食事はとれていますか?
・眠れていますか?
などと、相手を気遣うように声をかけ、そばに寄り添ってあげるのも良いでしょう。
- 4.手を差し伸べたいときは具体的に言う
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「出来ることがあったら何でも言ってくださいね」ではなく具体的な提案をしましょう。
~例~
・食事の支度
・買い物
・葬儀の後片付けや、手続き代行
・ペットや植物のお世話
- 5.故人様を懐かしむ思い出話を語る
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隠れた美点を挙げて、故人様を褒めることは、遺された人の心に誇りを持たせ、立ち直るための支えとなります。
まとめ
大切な人を喪失した方は、平常心で物事を判断できないことがほとんどです。
そのため、普段の何気ない言葉や励まそうと思って言った言葉でも、
相手を傷つけてしまったり、さらに深い悲しみに追いやってしまったりすることもあります。
大切なのは、相手の感情を受け入れ、共感し、思いやりを持つことです。
「時間が解決する」「泣いてばかりいないで」といった助言や否定的な言葉を使うことは避けましょう。
また、悲しみの表現方法や、悲しみからの回復のスピードは、人によって大きく異なります。
自分はこうだったから、別の人はこう励ましたから、などと
自身の意見を押し付けず、相手の気持ちを尊重することが大切です。