親が亡くなった後、家の名義はそのままで大丈夫?|相続登記の義務化・期限をわかりやすく解説

お葬式が終わってからの数か月は、手続きが立て続けに来ます。役所の届け出、健康保険、年金、銀行口座、公共料金の名義変更。ひとつ終えると次が出てきます。

そのなかで、もっとも後回しになりやすいのが、ご実家の名義です。

後回しになる理由は、はっきりしています。急がなくても、日常が困らないからです。

住み続けているなら住めます。誰も住んでいなくても、そのまま置いておけます。督促状が届くわけでもありません。ですから「そのうちやろう」のまま、一年、二年と過ぎていきます。

ですが、この点が変わりました。

不動産の名義変更、いわゆる「相続登記」は、2024年4月1日から法律上の義務になりました。

この記事では、法務省・法務局が公開している資料に基づいて、相続登記の期限の正確な数え方、過料の本当の条件、間に合わないときの選択肢、そして今日できる確認方法を整理します。

なお、わたしどもは葬儀社です。登記の手続きそのものは司法書士等の業務ですので、この記事でお伝えするのは「順番」と「期限」にとどめています。


目次

相続登記とは?

相続登記とは、亡くなった方が所有していた土地や建物の名義を、相続した人の名義に変更する手続きです。手続きは法務局で行います。

よくある誤解が、「役所に死亡届を出せば、家の名義も変わるだろう」というものです。

変わりません。

死亡届は戸籍と住民票に関する手続きであり、不動産の登記はまったく別の手続きです。法務局で手続きをしない限り、登記簿上の所有者は亡くなった方の名前のまま残り続けます。

10年経っても、20年経っても、そのままです。


2024年4月1日から相続登記が義務化

2024年3月31日まで、相続登記は任意の手続きでした。期限もありませんでした。

2024年(令和6年)4月1日から、申請が義務になりました。

不動産登記法 第76条の2
相続によって不動産の所有権を取得した相続人は、相続登記の申請をしなければならない

2024年3月31日まで2024年4月1日から
位置づけ任意義務
期限なし3年以内
違反した場合なし10万円以下の過料の対象(条件あり)

「できればやってください」から「しなければならない」に変わった、ということです。


相続登記はいつまでに必要?

期限は3年ですが、3年の起算点がもっとも誤解されています。

法律が定めている起算点は、次のとおりです。

自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から3年以内

つまり、

  • ❌ 親が亡くなった日から3年
  • ⭕ その不動産を相続で取得したと知った日から3年

法務省もQ&Aで、こう説明しています。

取得した不動産を具体的に知るまでは、相続登記の義務はありません

たとえば、親御さんが地方に持っていた土地の存在をご家族がまったく知らなかった場合、その土地について知るまでは、その土地に関する義務は始まりません。

2024年4月1日以降に相続した場合

相続が始まったのが2024年4月1日以降であれば、考え方はシンプルです。

その不動産を相続で取得したと知った日から3年以内に、相続登記を申請します。

たとえば2026年5月に相続が始まり、その時点で実家を相続すると分かっていたのであれば、期限は2029年5月です。

2024年4月1日より前の相続の場合

2024年4月1日より前に開始した相続によって取得した不動産も、義務化の対象になりました(民法等の一部を改正する法律〔令和3年法律第24号〕附則第5条第6項)。

このケースの期限が、2027年(令和9年)3月31日までとされています。

ただし、法務省の説明には続きがあります。

令和9年3月31日まで(不動産を相続で取得したことを知った日が令和6年4月以降の場合は、その日から3年以内)

つまり、期限は「2024年4月1日」と「取得を知った日」の、遅いほうから3年です。

遺産分割がまとまったら、もう一度

見落とされやすい点がもうひとつあります。

遺産分割(相続人間の話合い)で不動産を取得した場合も、別途、遺産分割から3年以内に、遺産分割の内容に応じた登記をする必要があります(法務省Q&A)

期限は最大で二段階ある、ということです。


「2027年3月31日」が期限になるのは誰?

「相続登記の期限は2027年3月31日」という表現をよく見かけますが、これは全員に当てはまるものではありません。

条件を整理すると、次のようになります。

その不動産を相続で取得したと「知った」のはいつか期限
2024年3月31日までに知っていた2027年3月31日
2024年4月1日以降に知ったその日から3年
遺産分割がまとまったその日から3年(上記とは別に、もう一度)

2027年3月31日は、条件によって最短でその日になる期限です。

ご自分がどちらに当たるのかを、先に確認してください。

⚠️ 登録免許税の免税措置と混同しないでください

相続登記には、租税特別措置法第84条の2の3による登録免許税の免税措置という、まったく別の制度があります。

相続登記の申請義務化登録免許税の免税措置
性格やらないと過料の対象(義務)要件を満たすと登録免許税が0円(優遇)
根拠不動産登記法76条の2 ほか租税特別措置法84条の2の3
対象すべての不動産土地のみ(①相続人が登記しないまま死亡したケース ②不動産の価額が100万円以下の土地)
期限経過措置分が令和9年3月31日令和9年3月31日

期限の日付が偶然一致しているだけで、まったく別の制度です。
免税措置の適用には申請書への根拠条項の記載が必要です。この記事では免税措置そのものは扱いません。


手続きをしないとどうなる?

不動産登記法 第164条第1項
正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、10万円以下の過料に処する

正確に押さえるべき点が二つあります。

① 「10万円」ではなく「10万円以下」

そして「必ず科される」ではなく「対象になることがある」です。

② 期限を過ぎた瞬間に自動で科されるものではない

法務省が説明している手続きの流れは、次のとおりです。

  1. 登記官が義務違反を把握する
  2. 義務違反者に、登記をするよう催告する
  3. 催告書に記載された期限内にも登記がされない
  4. 登記官が裁判所に通知する
  5. 裁判所が要件に該当するかを判断し、過料を科する旨の裁判を行う

「正当な理由」として法務省が挙げている例

  1. 相続人が極めて多数に上り、かつ、戸籍関係書類等の収集や他の相続人の把握等に多くの時間を要する場合
  2. 遺言の有効性や遺産の範囲等が相続人等の間で争われているために相続不動産の帰属主体が明らかにならない場合
  3. 相続登記の義務を負う者自身に重病その他これに準ずる事情がある場合
  4. 配偶者からの暴力の被害者その他これに準ずる者であり、その生命・心身に危害が及ぶおそれがある状態にあって避難を余儀なくされている場合
  5. 経済的に困窮しているために、登記の申請を行うために要する費用を負担する能力がない場合

過料は「罰金」ではありません

過料は行政上の秩序罰であり、刑事罰である罰金とは別のものです。前科はつきません。

実際に困るのは、むしろこちら

名義が亡くなった方のままだと、その不動産は、

  • 売却できません
  • 貸すことができません
  • 担保に入れることもできません

介護費用をまかなうために実家を売ろうとしたときに、名義がそのままで動けない。制度としては、そういうことが起こり得ます。

さらに、相続人の方が次々に亡くなっていくと、関係者がねずみ算式に増え、話し合い自体が難しくなっていきます。


相続人申告登記とは?

「3年以内と言われても、遺産分割の話がまとまらない」。

そのために新設されたのが「相続人申告登記」です(不動産登記法76条の3)。

登記簿上の所有者の相続人であること等を、期限内(3年以内)に登記官へ申し出ることで、申請義務を履行したことになります。

使いやすい点

#内容
1相続人が単独で申し出られる(他の相続人の合意は不要)
2法定相続人の範囲・相続分を確定させる必要がない(必要書類が少なくて済む)
3登録免許税がかからない(戸籍謄本等を取り寄せる実費は別にかかります)
4押印・電子署名が不要。ウェブブラウザから手続きができる

必要な書類

  1. 申出書
  2. 申出人が登記簿上の所有者の相続人であることが分かる戸籍謄本等
  3. 申出人の住所を証する情報

4.(代理人による場合のみ)委任状

申出先は、その不動産を管轄する法務局です。

⚠️ ここは必ず押さえてください

誤解正しい理解
これで名義変更が完了する❌ 名義は変わりません。不動産の権利関係を公示するものではありません
これで売却・担保にできる❌ できません。あらためて相続登記が必要です
兄弟全員の義務が果たされる❌ 申出をした相続人についてのみ、義務を履行したものとみなされます
遺産分割後もこれでよい❌ 遺産分割がされた後にこれに基づく登記をする義務は、相続人申告登記では履行できません

相続人申告登記は、義務を履行する方法の一つであって、名義変更そのものとは別です。


親の家の名義を確認する方法

やることは一つです。いまの名義を確かめてください。

① 固定資産税の納税通知書

毎年、市区町村から届きます。どの土地・建物に、誰あてに課税されているかが分かります。

※ 様式・同封物・記載項目は市区町村によって異なります。

② 登記事項証明書(法務局)

いまの所有者の氏名が記載されています。ご家族でなくても、どなたでも請求できます。

請求方法手数料
書面請求(窓口・郵送)600円
オンライン請求・送付520円
オンライン請求・窓口交付490円

(令和7年4月1日から。1通の枚数が50枚を超える場合は、超える50枚までごとに100円が加算されます)

そこに書かれている名前が亡くなった方のままであれば、手続きはまだ、ということです。


葬儀後、いつ確認すればいい?

葬儀の直後に、すべてを進める必要はありません。

お葬式の直後は、気持ちの整理がつかないまま事務手続きだけが続く時期です。そこに相続の話まで重ねると、たいていうまく進みません。

現実的な目安としては、四十九日を過ぎて、役所や金融機関の手続きがひと通り落ち着いたころに、一度だけ名義を確認しておく。それで十分だと思います。

期限は3年です。3年というのは、慌てなくてよいけれど、忘れてよい長さではない、という長さです。

ですから、お伝えしたいのは一点だけです。

後回しにするのはかまいません。ただ、そのまま忘れないでください。

忘れないためにいちばん確実なのは、いま名義がどうなっているかを一度見ておくことです。親御さんの名前のままだと分かれば、「まだ終わっていない」と認識できます。

なお、葬儀後の手続き全般について分からないことがあれば、多摩中央葬祭でもご相談をお受けしています。ただし登記そのものは司法書士等の業務ですので、その点はお伝えしたうえで、適切な窓口をご案内しています。


よくある質問(FAQ)

Q1. 親が亡くなったら、必ず3年以内に相続登記をしなければいけませんか?

期限の起算点は「親が亡くなった日」ではありません。「その不動産を相続で取得したと知った日」から3年以内です。相続によって不動産を取得した相続人が対象となります。なお、遺産分割がまとまった場合は、その日からさらに3年以内に、内容に応じた登記が別途必要です。

Q2. 2027年3月31日は、全員の期限ですか?

いいえ。全員一律の期限ではありません。2024年3月31日までにその不動産を相続で取得したと知っていた方の期限が2027年3月31日です。2024年4月1日以降に知った方は、知った日から3年以内となります。2027年3月31日は、条件によって最短でその日になる期限です。

Q3. 手続きをしないと、必ず10万円を払うことになりますか?

いいえ。正当な理由なく申請を怠った場合に、10万円以下の過料の対象になることがある、というものです。期限を過ぎた瞬間に自動的に科されるものではなく、登記官による催告 → 期限内にも登記がされない → 裁判所への通知 → 裁判所の判断、という手続きを経ます。また、過料は行政上の秩序罰であり、罰金(刑事罰)ではなく、前科もつきません。

Q4. 相続人申告登記をすれば、名義変更は終わりますか?

いいえ。相続人申告登記は申請義務を履行する方法の一つであり、名義変更そのものとは別です。登記簿上の名義は変わらないため、売却や担保設定にはあらためて相続登記が必要です。また、申出をした相続人についてのみ義務を履行したものとみなされ、遺産分割後の登記義務はこの方法では履行できません。

Q5. 実家が誰の名義か分からない場合は、どうすればいいですか?

法務局で登記事項証明書を取得すると、現在の所有者の氏名が確認できます。ご家族でなくても、どなたでも請求できます。手数料は窓口での書面請求で600円です。毎年届く固定資産税の納税通知書も手がかりになります(様式は市区町村によって異なります)。

Q6. 葬儀社が相続登記を代行できますか?

できません。登記の申請は司法書士等の業務です。多摩中央葬祭では、葬儀後の手続き全般についてのご相談はお受けしていますが、登記そのものの代行は行っておらず、法務局や司法書士等の適切な窓口をご案内しています。

Q7. 相続登記の費用はいくらかかりますか?

登録免許税や司法書士報酬は、不動産の評価額や事案、事務所によって異なります。具体的な金額は法務局または司法書士へご確認ください。なお、相続人申告登記については登録免許税がかかりません(戸籍謄本等の取得実費は別にかかります)。

Q8. 建物だけ、土地だけの場合も義務の対象ですか?

相続によって所有権を取得した不動産が対象です。土地・建物それぞれについて、取得を知った日から3年以内が期限となります。個別の判断については法務局へご確認ください。


まとめ

  1. 相続登記は2024年4月1日から義務です(不動産登記法76条の2)
  2. 期限は「その不動産を相続で取得したと知った日」から3年以内。起算点は亡くなった日ではありません
  3. 2027年3月31日は、条件によって最短でその日になる期限であり、全員一律ではありません
  4. 遺産分割がまとまったら、その日からさらに3年以内に、内容に応じた登記が必要です
  5. 正当な理由なく怠った場合、10万円以下の過料の対象になることがあります(自動ではなく、罰金でもありません)
  6. 間に合わないときは相続人申告登記という方法があります。ただし名義変更そのものとは別です
  7. 今日できるのは、いまの名義を確かめることです

まず、ご実家の名義を確認してみてください。


この記事は一般的な制度の説明であり、個別案件は法務局・司法書士等へ確認してください。


出典(2026年9月30日に各公式ページで確認)

出典URL
法務省「相続登記の申請義務化について」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00599.html
法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00565.html
法務省「相続人申告登記について」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00602.html
法務省「相続登記の申請義務化特設ページ」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00590.html
法務局「相続登記が義務化されました(令和6年4月1日制度開始)」https://houmukyoku.moj.go.jp/tokyo/page000275.html
法務省「登記手数料について」https://www.moj.go.jp/MINJI/TESURYO/
法務局「相続登記の登録免許税の免税措置について」(※混同防止のための参照)https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000017.html

根拠法令:不動産登記法76条の2・76条の3・164条1項/民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)附則第5条第6項/租税特別措置法84条の2の3(免税措置の注記のみ)


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